八木

あっちゃんの八木のレビュー・感想・評価

あっちゃん(2015年製作の映画)
3.7
 ニューロティカ、認識したのは、TV-Freak Records周りで音源発売したりしてた時期で、そのあと意識が飛んで、気が付いたら常に「活動x年記念」という看板で大阪にライブがくるタイミングばっかりでした。なぜか、キャリアのあるパンクバンドは「キャリアを積み上げる」ということが存在する理由と思っていたし、画像が出てくれば相変わらずピエロの恰好してるもんだから、やはりニューロティカも今後ずっと続いていくのだろう、と勝手に思っておりました。
 しかし、当然というかなんというか、このドキュメンタリーを見ていろいろあったということがわかりました。

 この映画においては、アツシは生き方としてパンクバンドをせざるを得なかった、というようなロマンチックな描き方はせず、事業として、趣味として、惰性として、ダラっとした印象すら与えながらニューロティカを継続してきたというイメージを作っています。『俺がいなくてもニューロティカやっていいよ、成立するだろうし』という、まさに内部にいて客観視できていない人間にしか発言できないようなことを言うし、たった数人で構成する社会で、その発言がバンドにどういう影響を与えるかは想像できていない、とても人間らしい部分を見ました。
 また、パンクバンドとして給料がいくらで、将来はどうなって、何年は最低やって、とか、時期ごとにドラマが積みあがった結果に、30年を超えるキャリアがあったことがわかります。当たり前だ。特に、僕が目にしたTV-Freakとのタッグは、インディー系スカパンク、スカコアブームの中で、純パンクバンドの早いビートをセールスポイントとして、アツシが全国に『営業をかけていた時期』『それが実った時期』だっただけというのは、衝撃でした。

 圧倒的なカリスマ性と芸術性をもって、生き方としてパンクであり続けるような人かと思っていたのに、この映画では、揺れながら継続してバンドを続け、家業も継いで婚期も逃して『バンドマン成れの果て』のモデルでありながら、ロックバンドの礎を築いた偉大な先輩として、尊敬と親愛を集めている、ただの人間であることがわかりました。そして、多分、これからも揺れながら続いていくことも予感できます。これ、生き方のケースの一つとして勇気をもらえるんじゃないですかね。
 さすがに、ニューロティカにちょっとした予備知識がなかったらきついかもしれません。
八木

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