SPNminaco

ストックホルム・ペンシルベニアのSPNminacoのレビュー・感想・評価

-
長い監禁から解放され両親の元に帰ったリアン。だが、彼女にはレイアとして育てられた自分がすべて。何もかも地下室で誘拐犯ベンが与えたものしか知らなかったリアンは、そのコントロールを愛情と思い込み、特別な関係だと頑なに信じてる。他人のような娘を前に空回りするばかりの実の親よりも、彼女にとってベンは感情をぶつけ信頼を築いた親子らしい関係だった。
それだけでもゾッとする話だけれど、更に容赦なく恐ろしいのは解放されたはずのリアンがもう一つの家に閉じ込められてしまうこと。タイトルがストックホルム(症候群)とペンシルヴァニア(実家)を同列に置くように、彼女にとっては、誘拐犯も実の親も異常なコントロール下に変わりない。2つの「家庭」はどちらも安住の場所ではなく、2つの名前を選ぶこともできない。そして、彼女は名前を捨てる。『ルーム』とかクロエ・グレース・モレッツ主演のPodcastドラマ『Gaslight』とか、似たような設定の物語はあるけど、被害者へのダメージの深刻さをここまで残酷に、冷ややかに描くのは異色だった。
映画は娘シアーシャ・ローナンと母シンシア・ニクソンががっぷり四つに組んだ、ほぼ2人舞台の心理劇といった印象。『ブルックリン』やグレタ・ガーウィグと組む前のシアーシャは、こうしたファナティックだったりエクストリームな役が多かったよなあ。
SPNminaco

SPNminaco