映画の味方あっつマン

光をくれた人の映画の味方あっつマンのレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
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オーストラリアの孤島で灯台守を務める元軍人のトム。その妻イザベルは、流産を繰り返し子供ができないでいた。ある日、海を漂う手漕ぎボートを発見し中を見てみると、男の死体とまだ幼い女の子が乗っていた——。



本作は、イザベル役のアリシア・ヴィキャンデル見たさで借りた。

アリシア・ヴィキャンデルは安定の美しさだった。それに、笑顔や真顔、泣いている顔など、同じ感情の表現でも、作品ごとに同じ表情はしない。カメレオン俳優とよく言うが、彼女の場合は、その色のグラデーションが繊細に変化する。また、感情を表に出すアメリカ的な演技も、感情を秘めるヨーロッパ的な演技も、作品ごとに使い分けていて、本当に良い女優さんだと思う。

映画は、観ている途中、何回も心が悲鳴をあげた。イザベルが流されてきた赤ちゃんを抱いているときの笑顔…トムを説得するときの悲痛な訴え…トムが赤ちゃんを育てるのに同意してしまうのも分かる。そして、その後のトムの良心の呵責も分かるんだけど…。良心に従い「正しさ」を突き通して、自分の愛する人を不幸にすることは、正しいことなんだろうか…。

昔に見たアメリカのドキュメンタリーで、息子を殺された母親が、謝罪する犯人に「神はあなたを赦されるでしょう」と言っていたのを不意に思い出した。当事、自分はあんなこと言えないと思っていたし、今回の映画であった「一度の赦し」にも、同じものを感じた。

「良心の声を恐れる」「罪の赦し」と、キリスト教文化の考え方が色濃く出ている本作は、儒教の影響も濃い日本では、少し慣れない部分もあるかと思う(※儒教は、身内・肉親びいきだから)。

疑問は残り、後味も悪くて、辛い映画だが、観て良かった。