鍋レモン

愛を複製する女の鍋レモンのレビュー・感想・評価

愛を複製する女(2010年製作の映画)
4.7
⚪概要とあらすじ
エヴァ・グリーン主演のSFスリラー。

海辺の小さな田舎町。科学が発達した今も残る美しい風景に囲まれ、幼なじみのレベッカとトミーは、子どもながらも深い愛情で結ばれていた。やがて大人になり、当たり前のように将来を誓い合う二人。しかし幸せの絶頂の中、突然の事故でトミーは帰らぬ人となる。極限の哀しみに打ちひしがれるレベッカだったが、再び幸せを取り戻すため、あるとんでもない方法を思いつく...。

⚪キャッチコピーとセリフ
“-遺伝子が、ふたりの運命を狂わせる。”

「いつまでも君を待ってる」

⚪感想
SFスリラー作品。

重い。

冷たくて切なくて寂しくて暗い。
でも温かくて素晴らしくもある。

観たあとの余韻が重すぎるのと後半苦しすぎて泣いた。

恋人や夫婦としての「愛」と息子や子供にとしての「愛」はやっぱり違うのかな。
どちらも家族に行き着くだろうけど。

とにかく繊細で冷たい描写に惹き込まれた。

お風呂場でのアングルが斬新で良かった。

エヴァ・グリーンの演技が上手くて、泣いてるシーンはほぼほぼつられて泣いてしまった。

原題は『Wamb』で「子宮」なのに邦題で『愛を複製する女』になるのは品がないのでは。
ジャケットも映画の内容に反してダサい。遺伝子とキラキラが要らない。世界観が違う。

音楽がほとんどなくセリフが少ないのも良い。

これは精神的に引きずる映画。

似た作品に『ザ・ドア』があるのがわからなくない。世界観というか冷たい空気感が似ている。

主人公に共感するかしないかでこの映画の好き嫌いも変わってくるかもしれないし、スローテンポだから苦手な人も多そう。

観た時期とメンタルが合っていてとても面白かった。



⚪以下ネタバレ



子供の頃に結ばれていたがレベッカが東京へ行くことになり離れ離れになり、再び再開したと思ったらトミーは死んでしまう。そこでレベッカはトミーのクローンを産むことを決める。

レベッカの覚悟が伝わってきた。
愛していた人を産むって相当の覚悟がないと。主人公がトミーを育ててまた恋愛をするみたいな内容だったら最悪だわと思ったけどそうではなく葛藤もありながら母親として愛情を注ぐ姿が苦しすぎて苦しすぎて。

クローン技術は現代でも可能だからリアリティがあるし、クローン人間に対しての差別があるのがまた現実的。
クローン人間の一件からトミーの誕生日パーティーに誰も来ないのが辛すぎる。「愚か」っていうのが本当に正しい。

トミーがレベッカからプレゼントされた恐竜を土に埋めて、夜に母親がまた持ってきたシーンが味わい深いというか理解しにくいけど好き。

トミーがやがて大人になって彼女ができた時のレベッカの表情。

亡くなった方のトミーの母親が来てしまったことが間違い。一目見たい気持ちはわかるけど。

トミーが動画を観ているときにほぼ無音に近い形になる演出がいい。

トミーという存在が子どもっぽく描かれているのはなぜなんだろう。
話し方や行動は最後の方まで子どもっぽかった。

いつかはバレてしまう言わなきゃならないって分かってはいても彼と過した時間の短さを考えるとこの選択肢は間違ってなかったって思う。

トニーが家を出ていった後に家のライトがついたのが救いかな。

自分の立場だったらレベッカと同じ選択をするかもしれないけど、もし大人になってから彼女とかできたらレベッカみたいに耐えられるのかと考えると辛すぎて死ぬやつだ。

映画としてレベッカはトニーとまた恋愛をしようとして産むのを決めたわけじゃいように見えたから狂ってるとか歪んでるとか感じないし、自分が年老いること、親になることを理解していたように思えたから純粋な愛なのでは。

⚪鑑賞
GYAO!で鑑賞(字幕)。
鍋レモン

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