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ヒメアノ〜ルのスギノイチのレビュー・感想・評価

ヒメアノ〜ル(2016年製作の映画)
4.2
面白くなるのは、森田剛演じる殺人鬼・森田が2人のセックスを窓の外から眺める場面からだ。
そして、本編中では中盤に位置するこのシーンになって、ようやくタイトルが映し出される。

タイトルバックとクレジットに乗せ、荒々しいBGMと共に森田が歩き出す場面は、『復讐するは我にあり』で緒形拳が浜松駅に降り立った時のような「さあ、今から怒涛の凄惨が始まるぞ」的な高揚があった。
実際、押し入った家の家主を殺した直後に食べかけのカレーを食い始めるシーンは『復讐~』の描写に通じるものがある。

主演がV6なのでどこまでやるのかと思っていたが、結構がっつりエグイ描写をやっている。
『13人の刺客』のゴローちゃんよりもひどいんじゃないだろうか。
原作の森田は残酷描写より内面描写に力が入っていたので殺人シーンは殆ど間接的だったが、映画版ではかなり直接的にやっている。
なので、本編中の暴力描写(殴打に連動して女の股間から失禁が噴出、レイプしようと生理中のナプキンを剥して顔を歪める、隣人の頬と脳天撃ち抜き)は映画オリジナルの残酷表現だ。
その他、印象に残る残酷描写も全て映画オリジナルなので、これはもう監督と森田剛の手柄と言っていいだろう。

古谷実の漫画は『ヒミズ』以降、『シガテラ』『わにとかげきす』と似たような内容を繰り返してはどんどん質が下がっていき、『ヒメアノ~ル』はもう下死点でしかなかった。
ただ、この映画版はその原作を上手く再構築して、見応えのあるバイオレンス映画に錬成していると思う。
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