文化庁の「若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)」で堀江貴大監督が制作した『はなくじらちち』を観た。地味な感じの映画だったけど、ダメオヤジの哀愁がよかったと思った記憶が…。そんなこともあってユーロスペースでの上映最終日、ほとんど義務感から観に行くことに。
さえない若い男が会社の同好会で始めたプロレスを通じ成長し、恋愛する姿を描いた活劇。
通販会社の破天荒社長が社内ではじめたプロレス同好会。ある日社長は、業績が思わしくない会社の売り上げ回復のため、通販番組をプロレスをしながら商品を紹介するエンターテインメントに改編することを思いつく。
今まで日の当たらない場所で、無気力に仕事をしていた主人公の男がレスラーに抜擢される。はじめのうちこそ言われるがままに取り組んでいたプロレスだったが、次第にのめり込み、やりがいを見いだしていく。
一方、恋人の女性は荒唐無稽なその仕事に納得できず、彼にプロレスをやめるよう促す。そんな二人の仲に割って入ろうとするライバルレスラーの男と因縁の対決へとつながっていく、みたいな。
この監督は、少し頼りなく、やる気の感じられないダメ男に優しい気がする。きっといい人なんだと思う。作風はコミカルだけど、じわっと感動を誘う感じなのかな。
最終日ということもあって監督と出演者の皆さんの舞台挨拶があった。ヒロイン役の女優さんが、ラストシーンのヒロインの心境について監督と何度も話しあったけど、未だに良くわかない、と話していた。
自分は、彼女が試合で主人公の成長を象徴する姿を見たから、だと思ったけど、違うのかな?やはり女性にはダメ男はダメ男なのかしら。そうだとすると、これはダメ男の願望を描いた映画なのかも。
以下、蛇足。
『はなくじらちち』もダメオヤジの娘が女子プロレスラーだった。さぞかし監督はプロレスが好きなのかと思いきや、舞台挨拶で監督はプロレス同好会の活動が活発な大学にいて、それが頭に残っていたからで、自分はそれほど詳しくないと…。なので、プロレスの練習から演出まで一橋大学のプロレス研究会の部長さんに手伝ってもらったとか。
通販会社とプロレスという取り合わせについては、映画のネタをひねり出している最中、同好会の一人が就職面接のPRで、椅子とプロレスをして某大手配給会社に内定をもらったことを思いだし、モノを使ってプロレスなら通販だとひらめいたそうだ。
何でも一生懸命やっていれば、人生の重要な局面で助けになってくれるものなのですな。
ちなみに、以前読んだネットの記事によれば「一流レスラーはホウキ相手でも試合ができる」と言われているそうで、DDTというプロレス団体は人形と人間の対戦カードを組んだことがあったらしい。