やわらか

バリー・シール/アメリカをはめた男のやわらかのレビュー・感想・評価

4.1
個人的な話だけど、トム・クルーズの映画ってあまり良い印象がなくって。「トップガン」とか「ハスラー2」とかはさすがにカッコイイな、とは思ったけどだいぶ昔の話だし。最近のやつだと「M.I.」みたいに評判いいやつを観ていなくて、「オブリビオン」とか「オール・ユー・ニード・イズ・キル」みたいなちょっと微妙なやつばっかりだったので。
 
で、今日もスケジュールだけ観てとりあえずチケット取ってから、トム・クルーズ出演って気付いた。「トムのやつだと、またB級なSFかアクションかそんなのかなー?」とかちょっと後悔気味だったけど、観はじめると全然そう言う映画じゃなかった。全然。
 
主人公、バリー・シール。凄腕のパイロットであり中南米の紛争状態にある国との交渉を行うエージェント、さらには薬の運び屋でもある。いったいどこの映画の主人公だよっ!って言いたくなる実在の人物が、政府やゲリラ、麻薬組織と表と裏で渡り合う。
 
コロンビアでの麻薬カルテルの豪華なパーティ。林の中から飛行機飛ばしたり、ルイジアナで儲けた金を使ってバカ騒ぎしたり。はじめから終りまでずっとスリリングな展開で緊張が解けることがなかった。また、映画全体の作り(ビデオテープによる○○)も、やられた!って感じで上手い。
 
この映画の凄いところは、バリー・シールのクレイジーな生き方と、トム・クルーズのあまり知的に見えないキャラクターが完璧にマッチしていること。要所要所で無茶苦茶な判断を下すバリーをトムが演じることで説得力のある役にしている。また、トム以外にも奥さんのルーシー、CIAのシェイファー、その他米政府の人間等、みんなどこか狂ってる、というか冷戦期のアメリカの異常な部分が良く描かれていると思う。
 
そう言う意味で、恐らくこの映画の本来のターゲットって、ノンフィクションを含むシリアスな映画をたくさん観る人やアメリカの歴史に詳しい人になると思う。けど、日本では「トム・クルーズの映画」っていう売り方をされているみたい。でも、トム・クルーズだから観に来た人にとっては、期待した格好いい or お茶目なトムはいないし。双方にとって不幸なことだね。

あと映画のタイトルも(しょうがないけど)「American Made」から変えられてしまった。この原題、全部観た後だとホントにいいタイトルなんだけど、日本じゃやっぱ難しいよね。とっても残念。でも、オレはこの映画大好きだな。トム、映画観る前馬鹿にしててご免なさいって感じ。
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