そのじつ

レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺のそのじつのレビュー・感想・評価

3.7
ゴーゴリの『ヴィイ』という怪奇小説が好きで、見てみた。
『ヴィイ』を下敷きにした怪奇風味のある冒険譚になっている。
ロシアの監督が撮り、ウクライナを舞台にした、ハリウッド映画的簡潔で健全なスジの作品。多くの人が楽しめると思う。

とはいえ甘く見たものでもなく『ヴィイ』の最大の魅せ場の教会での祈祷シーンもガッツリ見せてくれるし、過去作へのオマージュを忘れず、かつ現代的表現もうまく使っていてセンスを感じさせる。

わたしが気に入ったのは、1800年代?その100年前くらいまで見ているのかな?という時代のウクライナの風俗、しかも村人の様子をつぶさに見せてもらったこと。
コサックの男達はモヒカン頭にヒゲをのばしている。体はゴツくて、イギリスからの旅行者である主人公は華奢に見えてしまう。

夜の食事は酒をまじえておおいに喋る。酔っ払ってくると、長刀を振り回して口論を始める始末。そんな粗野な野郎どもの酒宴が、いつしか禍々しい姿の妖怪変化だらけの魔界へと変貌していく様が素晴らしい。
クリーチャーのデザインもありきたりでなく、土着の魑魅魍魎をディティール豊かに描き出して満足度が高い。
ウクライナの怪談・水死女のモチーフもちゃんと散りばめられている。

娘はエキゾチックで妖艶に美しく、ヒゲの親父様どもは勇猛なゴツい荒くれ男。老婆の汚さも一級品です。神学生たちも。
教会の独特の建築や、森、沼地のロケーションもよい。

ゴーゴリ原作の作品らしく、郷土色を濃く漂わせた仕上がりの映像に満足しました。
そのじつ

そのじつ