ミーミミ

たかが世界の終わりのミーミミのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
5.0
「人は様々な動機に突き動かされて
自らの意志でそこから去る決断をする
振り返ることもなく…

(そしてまた)同じように
戻ろうと決意する理由も数多くある

こうして長い不在のあと、僕は決めた
自分が来た道をたどろうと

僕の死を告げるために」


12年振りにルイ(ギャスパー・ウリエル)が家族のもとに帰ってきた

息子を溺愛する母親(ナタリー・バイ)
幼い頃に離れて幻想の中で兄を恋慕う妹(レア・セドゥ)
ルイにコンプレックスを持つ激情派の兄(ヴァンサン・カッセル)
初めてルイに対面する慎ましい兄嫁(マリオン・コティヤール)


それぞれの家族がそれぞれの感情で
少し興奮気味に少しぎこちなくルイを迎えるのだが…



果たしてルイは大事な告白を遂げることが出来るのか?

家族との空白の年月を埋め、最後の時間を過ごすことができたのだろうか?



上質な戯曲を観ている様

すべてが刺激的で、細胞が覚醒する


エキセントリックな演出に煽られ、逆接に翻弄された中で見えてくる、ある確信


「たかが世界の終わり」
こんなに素晴らしい題名を私は知らない


そして、こんなに美しい愛の物語を私は知らない




以下ネタバレ





もし
利己的に見える言動が、実は相手の為だったと知ったら


もし
見えていることが真実ではなく、まったく見えていないことが真実だとわかったら




絡んでしまった糸がすーとほどけていくように

がんじがらめの魂が解き放たれていく


「怒りも、憎しみも、悲しみも
 そのすべてが “愛” だと知る」byグザヴィエドラン



たくさんある好きなシーンの中でもラストは秀逸


家族の激情が去り静かになった部屋で、ルイがひとり……その眼差しにもう迷いはない

実家の空気を静かに深く吸い込み、光の中へ力強く出ていく、ルイ



すべてを目に焼き付けたい



グザヴィエ・ドランは天才


追記
訃報。
ギャスパー・ウリエルさんのご冥福をお祈りいたします。

あのラストカットを忘れません。
ミーミミ

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