マヒロ

サリヴァンの旅のマヒロのレビュー・感想・評価

サリヴァンの旅(1941年製作の映画)
4.0
(2024.7)
大衆向けの娯楽映画で成功している映画監督のサリヴァン(ジョエル・マクリー)は、次回作では社会派の真面目な映画を撮ろうと意気込む。売れ線の娯楽作品を作り続けてほしい製作会社は、裕福な家庭に生まれ育ったサリヴァンに社会問題は分からないだろうと止めようとするが、その言葉で火がついたサリヴァンは、わざと金を持たず浮浪者の振りをして旅をすると言い飛び出していってしまう……というお話。

ジャンルを横断するような思い切った展開が魅力的な作品で、スラップスティックコメディのようなドタバタが始まったと思ったら、酒場で女優志望の女性(ヴェロニカ・レイク)と出会いラブコメ風になり、彼女との旅でホーボー生活を体験する場面ではサイレント映画のような演出がされ、そうこうしてるうちに突然物語がヘビーな方向に急転換するなど、あちこちに舵を切るので何が起こるか分からないスリリングさすらある。
ただ、それでも散漫な印象にならないのは、映画監督であるサリヴァンが映画のために身体を張りまくるという軸があるからで、ボンボンなのでちょっと抜けてるところもあるが、基本はまっすぐな男なので彼の動向をとにかく追いたくなる。ヒロインであるヴェロニカ・レイク(なぜか役名がない?)は『拳銃貸します』での影のあるファム・ファタールっぷりが印象深かったが、今作ではコメディエンヌとしてまた違った印象を見せており、クールなようで結構サリヴァンを振り回したりする行動的なところが魅力的。

社会派映画を撮りたいサリヴァンが、本当に社会の荒波に揉まれた結果たどり着く結論が映画への愛に溢れていて良かった。この映画だけでジャンルがガラッと変わってくるのも、どんな映画でも愛すべきというこの映画のメッセージを体現しているようなのも面白い。
少しだけ気になったのは、いわゆる社会派代表としてなのかキャプラやルビッチへの当て擦りみたいなセリフが出てくるところで、まあ冗談なんだろうけどそこをバカにした感じが出るとダブスタっぽくなっちゃわないかなとは思った。
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