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大阪外道 OSAKA VIOLENCEのyuco70のネタバレレビュー・内容・結末

大阪外道 OSAKA VIOLENCE(2011年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

生駒山のふもとのボロボロの文化住宅でぎゅうぎゅうに暮らす家族のリアル大阪下町物語。と言ったら先日観た市川準監督「大阪物語」と同じなんだけど、あれがメジャー映画ならこれはマイナー版かな。ヤクザチンピラものの暴力映画だけど、そこで暮らす子どもたちの映画とも言える。暴力が日常にある場所で育ってゆく子どもたち。年若いお姉ちゃんが優しくて「大阪物語」でもそうだったけどまだまだ幼いはずのお姉ちゃんがお母さんみたいにすべてを受け入れている。どうしようもない父親だと当然母親は出て行くから残された子どもが母親になるしかなく、つらいことと思われるのだが、なんだか自由で楽しそうで(美化とも言えるが)自分もその家族に入りたいような入れてもらえるような気持ちになる。反面男の子たちに綿々と続いてゆく暴力。でも暴力も人との関わりの一部であって、その人の本質ではないと感じた。暴力はもちろん許さないし嫌いだけどそれでしか関われない(それしか知らない)人たちや環境があって、“人と関わる”ということを考えさせられた。自分より弱いものに暴力をふるい、その人はまた弱いものに暴力をふるう。肉体的な暴力でなくてもそういう弱いものいじめの構図はある。ラストシーンそのいちばん弱いもの=子どもがはむかうところで終わるのだが、それは頼もしくもあるし、けっきょく暴力か…という悲しみでもある。そうなりますよね…と環境を憂いたりする。めちゃめちゃ救いがないところとめちゃめちゃ救いがあるところが混ざっていて、そういうところが大阪的だと思う。なにもガラが悪いのだけが大阪的ではない。あと、3人出てくる“お父ちゃん”たちが全員絶対的に強く描かれているところと、女の子たちは決して暴力に見舞われないところが印象に残った。暴力シーンはそこまで激しくないしグロくないしスカッとするほどでもないので、エンタメバイオレンスではなく、人間関係、父権、権力のメタファーとしての“暴力(肉体的な)”なんだと思う。監督さんは教育映画も撮ってらっしゃるみたいで、なるほどと思いました。メジャー作品にはなれないだろうけど、こういう作品を観て考えたり思い巡らしたりするのは楽しいし映画でこそだなと思いました。現実だとつらい。
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