Kazumi

この世界の片隅にのKazumiのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.2
原作未読。
一度だけ行った呉の空気を思い出して、作品に重ねる。

ふんわりした絵柄で穏やかに見られた。
戦前から戦後すぐまでをヒロイン・すずの目線で描く。すずはのんびり屋で、豊かな絵の才能を持ったヒロイン。

水彩パステルに油彩、ぼかしもはっきりとした筆致も、すずの感情の起伏で使い分けられていて、ほとんどながら見だったのに心に入り込まれた。

戦前の生活の様子をあまり知らなかったので面白かった。モノは無くとも工夫を凝らしていたんだと分かる。

戦時中、戦後の焼け野原の腥さは実写に比べればふわりと受け止められる。
グズグズに腐敗した死体にも、それほどの忌避感を持たず、肉が腐る臭いを想像しない。そこにある悲しみに集中する。

空襲の中に飛び出したすずと、銃撃から庇う周作のちぐはぐなやりとりはグッときた。
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