けんこや

氷の花火 山口小夜子のけんこやのレビュー・感想・評価

氷の花火 山口小夜子(2015年製作の映画)
4.2
かなり前のことになるけど、鈴木清順さんの『ピストルオペラ』を観に行ったときに、「なーんか自分が子供の時にCMとかポスターで見てた人に似た女優さんが出てるなー」と思いながら見てて、あとでパンフレット見たら本人だったんで超びっくり。自分が子供の時に知ってる姿とまるで容姿が変わってないの一体どういう訳???それと、なんでそんなに凄い人がこんなカルトな映画に出てるの???という二重の驚き。

以来、自分の中で山口小夜子さんは気になる人だったので、この映画も機会があれば見たいと思ってて、このたびようやくそのチャンスに巡り会えた。

スクリーンに次から次へと映し出される山口小夜子さんはひたすら美しかった。ひたすら神々しかった。また数々の証言やインタビューから語られるその超越したような人間性にひたすら驚かされた。

後年、アングラサブカルの世界で活躍してたのも知らなくて、鈴木清順さんの作品の中で躍動してたのがすっかり納得できた。

普段の様子とモデルの御姿がまるで違ってたのも衝撃的で、作中でもカメラマンの方が、「別の人が来たと思ったけどレンズ向けたらいつも知ってる山口小夜子さんになってた」とか言ってるのが印象的だった。
「考えなくても服がどうすればいいか教えてくれる」というセリフも心に強く残った。

纏い人。衣食住でいうところの「衣」を愛し「衣」に愛され、そのまま「衣」の中に溶け込んで消えてしまったような印象。何を言ってるのかよくわからないと思われるかもしれないけど、この映画を見た人なら分かってもらえるかも。


ところで見てる間はあんまり気にならなかったんだけど、よくよく考えると亡くなった方の遺品をずらりと並べてカメラに晒しちゃったりその遺品である洋服をモデルさんに着せて擬似山口小夜子さんを再現したりするのって、ちょっとどうなのよ!とか沸々思えてきてしまい、要するに山口小夜子さんに気持ちが入りすぎてなんかちょっと変な感じになってしまってる。

しばらくの間山口小夜子さんのことが頭から離れなさそう。
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