荒野の狼

映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年の荒野の狼のレビュー・感想・評価

5.0
2018年8月にさくらももこさんが53歳で亡くなられたが、追悼のおもいで本作を鑑賞。私は原作者とは同世代でありながら、ちびまる子ちゃんは未見であった。というのは、ちびまる子ちゃんが登場した1986年は、1965年生まれの原作者は成人であり、私も本作の対象年齢をはるかに越えていたからである。シリーズや主題歌のヒットは当然知ってはいたが、本作を見たいという気持ちはおこらなかったのであるが、原作者が亡くなるにいたって、同世代で一時代を築いた作者に敬意を表するという意味もあり鑑賞した。本作は2015年公開の95分の作品であるが、大変楽しい作品で、私は、はじめて本作を鑑賞する中年男性でありながら飽きることなく鑑賞した。1974-1975年の時代設定ということであるが、勿論、当時を懐かしく感じるような背景は登場するのであるが、ことさらに懐かしさを強調した演出がないのも好感がもてる。留学生の来日、新幹線での移動、京都や大阪の観光風景など、設定が現代であったとしてもほとんど変わらない場面設定なので時代錯誤という感覚はまったくない。私は現在、大阪在住であるが、本作の道頓堀は今も昔もかわらない描かれ方で地元の人間としては単純に喜んでしまったほどである。声優ゲストとしてローラ、劇団ひとり、渡辺直美らが留学生役として出演しているが、鑑賞中は本人たちと全く気がつくことがなく見ることができ、うまく役をこなしている。作中でひとり丸尾くんのみが、留学生のホストになれなかったためパーティーにも旅行にも招待されず、損な役回りでどうかと思われたが、エンディングの写真で旅行のお土産をプレゼントされて喜んでいる丸尾くんが紹介され納得。本作のハイライトは、まる子の「友情は時間も超える」「漫画家になりたい」というセリフで、後に漫画家として大成した作者が死後も時間を超えて視聴者の心に残る作品に生きていることをしみじみと感じる。

以下は抜粋。

アンドレア:まる子は何になりたいですか?
まる子:私は漫画家になりたいんだ

まる子:アンドレアのおじいちゃんの友情は国も時間も超えて、このスパゲッティの中にも生きているんだね
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