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現像液のakrutmのレビュー・感想・評価

現像液(1968年製作の映画)
3.3
ある夫婦と男の子を無声の白黒映像としてスタイリッシュに映し出した、弱冠20歳のフィリップ・ガレル監督の実験的映画。

明確なストーリーは存在せず、小さい男の子とその両親と思われる男女が何かから逃れていく様子を映していくだけであり、映画というよりもビデオアートと呼んだほうが正確であろう。光源の強弱を調整してネガのような映像を作ることで、題名のとおりフィルムを現像していくプロセスを表現しているようにも見える。ベルナデット・ラフォンが(特に最初のほうのシーンが)かなりエロっぽいとともに、どこか性的なインプリケーションを持たせているような映像は見どころ。それでも、映画として見てしまうと退屈なのは否めない。

一方で、当時のフランスの社会情勢を考えると、つまり公開された当時のフランスの人々がどう感じたがを考えると、本映画の印象はまったく異なるのかもしれない。「May 68(Mai 68)」と称されるフランスの5月革命の年に本作が公開されていることを考えると、権力への異議を唱えながらも圧制への不安や孤独感が印象的に表現されているとも解釈できる。

フィリップ・ガレルの作品は息子のルイ・ガレルを起用している晩年のものしか見たことがなかったので、若い頃にこのような前衛的な映画を撮っていることに驚いた。でも本人が自分はゴダールの弟子だと言うほどヌーヴェル・ヴァーグ、特にジャン=リュック・ゴダールに影響を受けているそうである。
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