カリカリ亭ガリガリ

クリーピー 偽りの隣人のカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
4.8
黒沢清的なショットの集大成的エンターテイメントでありながら、物語と演出が流石にちぐはぐな印象で、演技も基本は演劇っぽいし、いやふざけてんのかいと笑っちゃうところ(笹野高史が落下するところとか)が多すぎるのだけれど、この歪つな商業映画の、そこに整合性を求めるのも違うんだろうなーと微笑みながら観ると、やっぱり超面白い。

大学での川口春奈と西島秀俊の対峙シーンは、やっぱり『マウス・オブ・マッドネス』がやりたかったのかな。みんなが真似したくなるエキストラの使い方。そして明るかったのにいつの間に暗くなってる照明!は『葛城事件』でもやってましたね。

ファーストショットの窓枠?とかプロペラと扇風機とかコの字型の建物とか洗濯機にぶつかる洗剤とか、そういった即物的な演出が総じて良い。極め付けはあの鉄の扉&あの部屋のドイツ表現主義的な美術。確かに理にかなった設定でありつつ、あんなビジュアルの部屋は映画で観たことなかったな。

香川照之は流石にやり過ぎというか、デフォルメのベクトルがダメすぎると思う。あれが『CURE』の萩原聖人だったらどんだけちゃんと怖くておぞましいか……なんなら『冷たい熱帯魚』のでんでんでもまだ良くて、要は薄っぺらくて掴みきれない感じが香川照之にはないので、狂人、を演じている人にしかやっぱり見えない。まあ面白いのだけれど。
対して西島秀俊は相変わらずの棒読み棒立ちを発揮させながら「もしかしてコイツの方がサイコパスなんじゃ……?」と観客に思わせるのに成功している。上手いとか下手とかじゃなくて、コイツやばいと思わせる演技で魅了的。

『CURE』でライターの火ひとつで催眠に成功していた萩原聖人を描いていた監督が、麻薬とか銃とか使って洗脳してほくはなかったな……

ラストの竹内結子の絶叫が超最高。もう取り返しがつかない、初めから取り返しがつかなかったことを知っちゃった人の絶望の叫び。西島秀俊と正しく抱き合えていないのも、もはやそういうメタファーに見える。

東出大爆発に劇場爆笑。

「マックス〜どんどんいくぞぉ〜〜!」