MasaichiYaguchi

素晴らしきかな、人生のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

素晴らしきかな、人生(2016年製作の映画)
3.5
「プラダを着た悪魔」のデビッド・フランケル監督最新作の邦題がフランク・キャプラ監督の名作と同じなので、リメイク作品と勘違いしてしまいそうだが、本作は別物。
ただ、クリスマスを舞台に絶望に打ちひしがれた主人公が奇妙な出会いによって変わっていく展開に共通するものがある。
原題は“Collateral Beauty”で、映画の字幕では「おまけの幸せ」となっている。
本作は、最愛の人を亡くして生きる気力を失った主人公ハワードが、絶望の淵から「おまけの幸せ」を見出すまでの心の旅を描いている。
このハワードを主演のウィル・スミスが繊細に演じていて心の琴線に触れる。
そして本作の素晴らしい共演者たち、エドワード・ノートン、ケイト・ウインスレット、マイケル・ペーニャがハワードの同僚を演じているのだが、彼らも夫々大きな悩みを抱えている。
更には彼らの会社が、経営者の一人であるハワードが喪失感からおかしくなったことにより危機に瀕している。
同僚たちはハワードと会社を救うべく、ある奇策を実行していく。
この奇策を手伝うのがヘレン・ミレン、キーラ・ナイトレイ、ジェイコブ・ラティモアが演じる三人組。
「人は愛を求め、時間を惜しみ、死を怖がる」という言葉を信条とするハワードは、「愛」や「時間」、「死」によって絶望の底に落とされたと考えているのだが、この考えを三人組は様々なアプローチで変えようと、そして固く閉ざした彼の心の扉をノックして開けさせようとする。
この三人の役割は、フランク・キャプラ監督作品におけるクラレンスに相通ずるものを感じさせる。
そして、本作の重要なキーワード「繋がる」。
人は絶望の中にいる時、深い孤独感に苛まれるが、本作は、そんな人を誰かが見てくれている、一人じゃない、繋がっているとメッセージを送っているように思える。