ベビーパウダー山崎

バービーのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
2.0
『レディ・バード』のパクり元『Real Women Have Curves』の主演女優(アメリカ・フェレーラ)をわざわざ使ってクソデカイ映画を撮ってしまうグレダ・ガーウィグ。図太いというか、ゾッとするほど性根が据わっている。0から1を産み出せるような作家ではなく、時代の空気を読むのはとにかく上手くて、勝ち馬に乗りきれる自信は満々にある。映画文法でも現代的な思想でもなんでも良いが、表層を掬いとるのは得意で、だからこそ大衆は支持するし、荒らされる前からそのジャンルと真剣に向き合ってきた者は毛嫌いする。欲しいものは奪い取り、他人の工夫や才能を己の血と骨にして「これは私の表現です」と堂々と言いきれる山師。こういう輩はいつの時代もいる。
全編に漂うノア・バームバックの無知な大衆を小馬鹿にする嫌みなインテリ臭。『2001年宇宙の旅』のくだらないパロも『ゴットファーザー』云々も、これぐらいなら理解できんだろと、低いハードル飛ばして理解度をはかっている。私たち客を知恵遅れだと言わんばかりに俗物が必死に教養を求める姿勢を物語にしているが、その説教というより洗脳を欲しがる大衆ばかりじゃないってことは覚えておけよな。動きが少ないとか、キャラクターが薄っぺらいとか色々とありすぎるが、そもそもこれはお遊び(箱庭)ですから、といった「逃げ道」もしっかり用意しているのが、更にケツをムズムズさせる。映画は理屈じゃねえんだよ、バームバック。
適材適所に配置された役者は、定番の持ち味をフルに発揮していて面白みはないけど、外しはしない。役者で冒険しない。演じて嘘がない役柄しか与えないのはガーウィグもバームバックもそう。インディーズあがりの二人だから、役柄と重ねることができる役者しか選ばないってのはあると思うな。
哀れなロボットが感情を持ち動き出す、アラン・アーカシュのゴミ映画『ハートビープス/恋するロボットたち』が無性に愛おしくなった。