てる

レディ・バードのてるのレビュー・感想・評価

レディ・バード(2017年製作の映画)
3.8
青春映画というより、思春期映画というべきか。誰もが共感し得る恥ずかしい思春期の時期を赤裸々に語ったようなリアルな作品だった。
本当はクリスティンという名前だけど、自称レディ・バード。そんな中二病のイタイ女の子。名乗るときにレディ・バードと呼んでというのがなんともイタイ。はぁ、もう、やめて! とつい自分の思春期を思い出し、恥ずかしくなってしまう。でも、そういう時期ってあるよね。
自分の境遇に嘆き、外の世界に憧れて、何か特別な人間になりたいという願望。特別な人間になりたいというか特別な人間なんだと思っている。それは大いなる勘違いなのだけど、学生という小さな立場で生きているうちは気づかないものなのだ。
彼女の中二病は重度だ。高校生にしては少し幼いかもしれない。だけど、彼女は心が強い。
格好つけて、スクールカースト上位の人にくっついて、バンドマンのイケメンと付き合い、自分は素晴らしい人間なんだと勘違いしていた。だが、本当に自分が必要なものを忘れてはいなかった。
あの車の中で、プラムに行きたいと言えた彼女は素晴らしい。たぶん多くの人は、あのまま流されるままに知らない誰かの家に行き、大切な一日を棒に降ってしまうことだろう。今の格好良い自分の立場を捨てて、掛け替えのない友人と大切な一日を過ごす。その選択は難しい。
誰もが他者からの見た目を意識するものだ。特に学生ってのはそういう生き物だ。だからスクールカーストなんてものが生まれるわけだが。そういう様々なしがらみを捨てて、カッコ悪くても好きなものを好きと言えるのには勇気が必要だ。
特に、レディ・バードなんて呼ばせて、外見をガチガチに意識していた彼女がその選択をしたというのは、とてつもなく大きな変化だ。大人になっても未だにそういう外見に捕らわれている人は多い。その選択が10代の頃に出来た彼女は今後素晴らしい人間になることだろう。最後の電話には感動した。
この作品を10代、20代の頃に観ていたならまた違った感想を抱いたことだろう。30代になった今、彼女と親の両方の目線でこの作品を観ている。おじさんになったからこそこういう目線で観れたと思う反面、若い頃に観たかったとも思う。
リアルな若者を描いた素晴らしい作品だった。
てる

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