魔女見習い

レディ・バードの魔女見習いのネタバレレビュー・内容・結末

レディ・バード(2017年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

多くの人が既に言っているように普通なんです。ただただアメリカの田舎で暮らす世間知らずの十代の女の子の普通の生活を切り取った映画なんです。そこには奇跡もなければ魔法もない。
でも私はこの1人の女の子を、上から見下ろすでもなく下から大袈裟に見上げるでもなく、正面から真っ直ぐ同じ目線で撮り切ったグレタ・カーヴィグに目一杯拍手を送りたい。簡単そうに見えるけど、この視点で最後まで持っていくのってなかなか出来ないと思います。

すっごくイケてる友達や恋人ができたり、何かで優勝したり、バンド組んだり、そういったいかにも映画っぽいドラマチックな脚色がある青春映画ってなんだか甘過ぎるキャンディが歯にくっついて痛い時のあの感じがして苦手なんです(嫌いではないしそういうのが観たい時もある)。そんなキラキラした青春あるわけねーだろボケとまでは言わないけど、そういった特別な青春を本当に送ることができるのって多分100人に1人なんじゃないかな(いやもっと少ないかも)。ただ映画ってドラマチックな媒体だからその1人を取り上げがちだと思うんですが、私がこの映画を好きな理由ってその他99人を選んだところなんですよね。そして私もその他99人の内の1人だったから、すごく親身になって観れたというか、純粋にレディバードに十代の時の自分をうっすら重ねていたと思う。
あとやっぱり本当に特別なことって特別じゃないというか、普通の中の特別というか、個人的にそういうのを1番信じているので、ウマが合ったのかもしれません。

好きなシーンは色々あるんですが、やっぱり最後の電話するシーンで「初めて自分で車を運転して街を走った時、感動した?」ってお母さんに聞くシーンかな。
車っていうものがアメリカ社会(特に西海岸)やアメリカでの青春において重要なメタファーだっていうのは散々語り尽くされてる事実ですが、ここでは免許を取って公式に大人になった時の高揚感と、今まで当たり前だったことがこれからは当たり前ではなくなっていくんだということにふと気付いた主人公の悟りというか、心境の変化が上手にさりげなく表現されていて本当に大好きです。運転席から見る青空と、お母さんが運転する横で助手席から毎日見ていた青空はきっと全くの別物だったんだろうと思います。
1人で何処にでも行ける自由と寂しさが痛いぐらい伝わってきた、本物の青春映画。
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