タケル

アウターマンのタケルのレビュー・感想・評価

アウターマン(2015年製作の映画)
3.8
 「日本バカ映画の巨匠」と呼ばれる河崎実監督の作品を初鑑賞。作品選びの順番を間違えたのだろうか。たしかにバカ映画ではあるのだが、不覚にも薄っすらと感動を覚えてしまった。弱くてやられ役の"侵略宇宙人"がたったひとりの少年との約束を果たすため、圧倒的パワーを持つヒーローに立ち向かっていく‥‥という構図がベタではあるがやけに響いた。本物のヒーローとは、大義を持って地球を救うような押し付けがましいやつではない。たったひとりのために立ち上がる勇気を持つ者こそが真のヒーローではないか。そんな大切で当たり前のことに、バカ映画の巨匠による作品に気づかされるとは。私もかなりのバカなのかもしれない。
 一方、作品の世界観は所々毒が効いていて、思わずクスッと笑ってしまった。侵略宇宙人がテレビ番組を用いたプロパガンダで地球人による抵抗を未然に防いでいたり、ヒーローを演じる俳優たちが実は一番ヒーローに愛着がなかったりと、細かい設定がいちいち凝っていて、皮肉もたっぷりで面白かった。
 やはり、観る順番を間違えただろうか。本作を心から楽しんでしまった結果、河崎実という人間が編み出したバカ映画の一群に抑えきれぬ期待を抱いてしまっている。「いかレスラー」とか、「地球防衛未亡人」とか、「かにゴールキーパー」とか、タイトルからして異様だし、あまりにバカバカしい。さて、この期待と不安はどう裏切られるだろうか。恐る恐る、あまり期待せず、それでも少しの希望を抱きながら、この沼に沈んでみようと思う。
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