Jeffrey

不愉快な話のJeffreyのレビュー・感想・評価

不愉快な話(1977年製作の映画)
3.0
「不愉快な話」

本作はジャン・ユスターシュが1977年に監督した50分のカラー短編映画で、この度DVDの特典に収録されていたものを初鑑賞した。この作品は彼のフィルモグラフィーの中で最も異彩を放つ作品と言われており、トイレの壁の穴から女性性器を覗き見ることに取り憑かれた男の独白と言うなんとも陰気な内容に、同じ語り俳優を変えて二度繰り返され、しかも最初に撮影された(ドキュメンタリー編)よりも後に撮影された(フィクション編)が先立つと言う奇矯の形式になっていて、実際、これまでの彼の作品が数本のドキュメンタリーも含め、彼自身の故郷、近親、幼年期、青年期を扱ういささかなりと自伝的な側面を持ったまのであるのに対して、これ以後にとられた作品は自伝的な側面を失うと同時に実験的な要素を表していき、これが彼のフィルモグラフィー上、画期的な作品であることは間違いないと吉田宏明氏は述べていた。

この作品は大して楽しくは無い。トイレで女性器を盗み見ることに取り付かれた体験を、女性を前に延々とモノローグで語り聞かせると言う2部構成の作品で、声の持つ魅惑と権力性を描くとともに、声とそれを表象する映像の間のヅレ、ドキュメンタリーと虚構の間の関係の揺らぎなど、これまでの映画の中に含まれていた要素を用いながら面目を一新し、新たな価値を開いている位だ。特に体験談は語られるだけで実際に見ているところを描かれていないのが少しばかり不満である。
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