めしいらず

メディアのめしいらずのレビュー・感想・評価

メディア(1988年製作の映画)
3.3
トリアー曰くカール・ドライヤーの脚本を元に独自に脚色したオマージュ作品とのこと。パゾリーニも撮ったギリシャ悲劇”王女メディア”の復讐譚である。物語の端緒を大胆に端折り、メディアによる夫イアソンへの復讐にフォーカスしている。妻メディアと幼い息子たちを捨て、コリントス王クレオンの娘グラウケと結婚し後継ぎに収まったイアソン。クレオンから国外追放を言い渡されたメディアは復讐を決意し、クレオン父娘を欺いて毒殺。さらに最愛の我が子まで手に掛ける。そうやってイアソンを逃れようのない悲しみのどん底に突き落とし、メディアは別の国へ去っていく。復讐こそ果てせても彼女もまた夫と同じ悲劇のどん底にいる。ドライヤーとタルコフスキーの流儀を用いて撮ったような映像感覚が素晴らしい。わざわざサイレント映画風な色調を前面に出した画作りの偏執狂的こだわり。頻出する水と風のイメージ。犬、馬。トリアー自身の礎を見えるような映像の美しさ。パゾリーニ版と比較するのも一興だろう。
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