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恐怖と戦慄の美女のhorahukiのレビュー・感想・評価

恐怖と戦慄の美女(1975年製作の映画)
3.9
『チャイルド・プレイ』の元ネタ!
…と言われている伝説的な人形ホラー『アメリア』を含む3話からなるホラーオムニバス。

私は世代じゃないので知りませんが、昔は良くテレビ放映していたようです。中でも『アメリア』はトラウマ製造機として伝説化していたらしく、当時見ていた方々に途轍もない衝撃を与えたらしいですね。

1話目『ジュリー』
高校生ジャッドはある日突然ブサイクな国語教師ジュリーの裸を見たいという衝動に駆られる。うまく取り入って映画に誘い、睡眠薬で眠らせホテルに連れ込み写真を撮ることに成功する。翌日からジュリーを写真で脅し好き放題の毎日を送るが…。

少しだけなら…と気を許したがために二度と後戻りできない地獄へと突き落とされるジュリーを描いた作品。気づいた頃にはもう遅い。今まで必死に積み上げてきたものを、たった一人の出来心の悪意によって一瞬ですべて粉々にぶち壊される恐怖。強引すぎるけど短編らしいオチも好き。


2話目『ミリセントとテレーズ』
主人公ミリセントは妹のテレーズが大嫌い。クソ真面目で地味な自分とは違い男を誘惑し遊びまくってるテレーズ。そんなテレーズを悪魔と契約したと思い込んでいるミリセントは、ある計画を実行に移すが…。

始まってすぐにオチがわかってしまう残念な作品。時代のせいだから仕方ないんですけどね。ただ、部屋に閉じこもることだったり、2人の関係性を暗喩させる表現は面白かった。


3話目『アメリア』
人類学専門の大学教授と付き合っている主人公アメリア。彼氏にプレゼントするためにズーニー人形を買ってきた。金曜の夜を彼氏と過ごそうと母親に連絡するが、毒親でなかなか納得してくれない。電話が終わって一息つくと、買ってきたズーニー人形が無くなっていることに気づき…。

さすが伝説となっているだけあって物凄いインパクト。お話としては単純なもので、ズーニー人形がナイフを持って主人公に襲いかかってくるだけ。だから登場人物は主人公のみ。部屋の中で一人芝居してるだけなのに、面白くて怖い映画として仕上げた製作陣の工夫が感じられる低予算ホラーの鑑のような作品です。

まずズーニーが襲いかかるまでの空気感の醸成がうまい。外れる金の鎖。いつのまにか無くなっているナイフ。誰もいないはずなのに聞こえる物音。部屋を横切る影。女性が一人暮らす部屋ではその全てが嫌な予感に結びついていく。

そして高速で容赦なく襲いかかってくるズーニー人形が恐怖感を煽る。ただ、人形が動いているのをそのまま見せると恐怖感を削いでしまう。本作はズーニー人形視点でカメラを動かし主人公を高速で追い回すことでチープ感を出さずに恐怖を盛り上げることに成功している。恐怖シーンと恐怖シーンの間の取り方や空間の切り取り方、見せ方もうまくて、緩急がしっかりついているのも恐怖の爆発力を増加させてる。毒親からの解放を暗示するラストもアホらしいけど好き。

とにかく3話目だけでも見る価値あるので、『チャイルド・プレイ』とか人形ホラー好きな方には是非見てほしい作品です!
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