JunIwaoka

メッセージのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
4.6
2016.10.29 @ 第29回東京国際映画祭

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品でまさか感動にも近い感情に心揺さぶられるとは思わなかった。特に原作が映像化が難しいとされる有名なSF小説と聞いて、この監督だし理解出来ない凄まじいなにかを覚悟していただけにね。
監督自身がTIFFに向けたビデオレターで美しいと言っていた脚本、特に脚色したであろうヒューマンドラマが素晴らしい。世界各国に突如現れた黒い物体。そのなかの未知なる生命体と、エイミー・アダムス演ずる言語学者が対話を試みる話なんだけど、これは未知なる生命体についての話ではなく、未知なる言語を探求し知ることについての話。そもそも言語というものが人間同士がコミュニケーションするためのツールと思っていたため、観る前はこの設定自体にあまりピンとこなかったけれど、学術的にときに科学的に知りゆく未知なる言語は、ある概念を覆し自分自身へと向き合わせる。冒頭で語るようにこれは「あなたのための物語」。もうクリストファー・ノーランかよって思うくらいロマンチシズムに溢れているけれど、予言というものが存在するように、言葉に奇跡が宿ることの意味を知る。
違いを埋めるには相手のことを理解することで、つまり対話しかありえない。たとえそこに理想的な美しい結末を語れなかったとしても、向き合うことを信じていたくなる。
JunIwaoka

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