ジャコ・パストリアス。
18歳の、ある徹夜明け、青みがかった微睡みのなかで聴いた「Mingus」の浮遊するような演奏は忘れられない。彼の死から3年後だった。
Joni Mitchell (w/Jaco Pastrius)
「A Chair In The Sky」
https://youtu.be/FjkBF-Phenc
世界中の人々を陶酔させつつも、自身の音楽を理解されない孤独に苛まれ続けた孤高の天才。射手座の宿命。
伴奏用の楽器であったベースでメロディをも奏であげるスタイルの先駆者。エレキベースをフレットレス化し、ハーモニクスを多用。ジャンルレスに”音楽”を紡ぎ出した純粋なアーティスト。
どこかチェ・ゲバラやアイルトン・セナを思わせる。
この作品をプロデュースしたメタリカのロバート・トゥルージロ、レッチリのフリー、スティング、ハービー・ハンコック、アル・ディ・メオラ、スタンリー・クラーク、ゲディ・リー、レニー・ホワイト、カルロス・サンタナ、ブーツィー・コリンズ、イアン・ハンター、そしてジョー・ザヴィヌル、ウェイン・ショーター、ジョニ・ミッチェル…錚々たるレジェンド達が口を揃えて”one & only”だと語る。
なのに。
堅実でお金に執着せず、クスリにも手を出さなかった男が。娘メアリーの誕生に「ベースで前代未聞のことをやらないと」と誓った良き父親が。
名声と重圧。天才と孤独。ショービジネスの魔物はどれだけの才能を食いつぶせば気がすむのか。
愛する家族と離れ、自らの死期を予言し、ドラッグに溺れ、双極性障害の果て、なかば殺されたような死にかた。何故あんな不幸なかたちで死を迎えなければならなかったのか。
唯一の救いは、スティングが“音楽的にはみんなジャコの子孫なんだ”という通り、みんな少しづつ彼のmemeを受け継いでること。
Before JacoからAfter Jacoの大きな変化のグルーブ。天国からも見えるはず。理解されたとわかるはず。
どこの配信にもカバーされず、圧倒的なカバレッジを誇るTSUTAYAのDISCASにすらスルーされた本作。やむを得ずDVD買ったんだけど、じゅうぶん価値はあった。
“ただベースが弾ければよかったんだ”