MikiMickle

ハードコアのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ハードコア(2015年製作の映画)
3.7
原題『Hardcore Henry』
2015 ロシア、アメリカ映画
監督はロシア人のイリヤ・ナイシュラー(バイティングエルボーズというバンドのヴォーカルらしい)


ある男が研究室で目覚める。科学者で彼の妻だという美女のエステルは、彼の失った左手と左足などをサイボーグ化し、絶命しかけた命を救ったらしい。そして、俺はヘンリーという名前らしい。記憶には全くない。
声帯手術直前に、研究室はエイカンという男に襲撃される。命からがらエアシューターで逃げ出すも、エステルはエイカンの手に…
声も出せない、何が起こっているのかも分からない状況。ロシア警察や軍隊はエイカンの手の内。
多方面から襲われる中、変幻自在で不死の謎の男ビリーを道先案内人として、己の僅かな命を存命する為、記憶を取り戻す為、エイカンの目論みを阻止する為、友の為、そして愛するエステルを救うため、ヘンリーは突き進む。


まずはこれ、完全なる“第一人称主観”です。
ビデオカメラやスマホなどを通してのPOVではなく、ヘンリーの目が私の目。つまり、見ている人それぞれがヘンリーなのです。
全く何も分からないまま、ヘンリーとシンクロしながら、ヘンリーの目線で話が進んでいきます。素晴らしい臨場感‼
FPSゲーム的映画と言われているけれど、私自身は最近全くゲームをしないので詳しくは述べられないけれど、確かにゲーム的ではあります。ストーリーにしても、自らの命をかえりみず、捕らわれた姫を救い出すマリオの使命感と同じ。(実際にマリオみたいなシーンもある) 声が出ずにセリフがないもの、ゲーム性があります。ボスが異様に強いのも。
が、ゲームが主観的で自分の意思で動くものであるのと違い、予想外の展開が続けざまに起こり、理解や分析する前に、考える間もなく体感として感じるものでした。(と言ってもストーリーはごくごく簡単なものであるし愛すべきB級だけれど♪)

なんというか、この映画は、異様な臨場感の中、主人公の脳と体に自分の目が移植されたような気持ちになるのです。命の躊躇をしない無言の主人公の。

正直、よくこんなのを撮ったなという感動がまずビシビシときます‼ ビジュアル的に面白過ぎるし、大興奮‼
街やらビルやら森やら巨大な廃墟(♡)やらを舞台にノンストップで息もつかせず駆け巡るアクション‼
スタントマンに付けたGoProカメラではあるものの、そのスタント自体が異常なものでもあるし、長回し的に回るカメラは途中で切り替わり継ぎ接ぎはしているのだけれど、カメラワークと切り貼りが上手いのでよくわからない。緊迫感が甚だしい‼ほんと、どうやって撮ったのだろう。高所でのバトルも多く、高所恐怖症の私にとっては背筋が凍ります。
バカみたいだけど、全編通して「うぎゃ〜‼凄い〜‼」としか言えない‼‼

この映画で素晴らしいのは、音楽でもあります。strangersのオープニングから始まり、例えば娼婦館ではマイガールがかかったり、歌詞と映像がリンクしたり、選曲センスが素敵‼
ビリーという謎の登場人物の七変化もそうなのですが、この映画の緊張感と間と笑いとの絶妙なバランスを音楽も担っていると思います‼ いきなりのミュージカルなダンスシーンとか(笑)まさかこんな所で?‼のQUEENの『Don't stop me now』なんて最高すぎますっ‼‼ まさにアドレナリンでた‼

そして、とにかく人体破壊描写が本当に素晴らしい‼‼ 真っ赤に染まったオープニングシーンでスローモーションの中の様々な人体破壊のアップから始まり(かっこよくてテンションあがる‼)、どんどんヘンリーに殺 られていきます‼‼ バッサリ、グッサリ、ボッコリ、バックリ、ドッカンと‼ 後半なんてもう、笑うしかないほどの人体破壊‼‼ ほんと、最高です…。 久しぶりにこんな切り株満載映画を見た‼‼ 切り株万歳‼ Vita切り株♥監督にありがとうと言いたい‼

この映画は完全に映像革命です。新時代POV。これからこう言った映画が作られていくでしょう。しかし正直、ここまでの完成度の高い一人称映画を作ってしまったら、もう次はないんじゃないかなと思えるような唯一無二のものでした‼
また、舞台がロシアという事もあり、カラッカラに暑く乾いたアメリカアクション映画と違い、どことなく漂う冷たい乾きと湿り気と晴れ間の見れないような曇り空も切なさを感じます……

脇役を固めるのはティム・ロスや、フェロモンたっぷりの憂いげな瞳のセクシー科学者の妻ヘイリー・ベネットや、『第9地区』のシャールト・コープリーや、金髪おかっぱが胡散臭すぎるw敵役のダニーラ・コゾロフスキーなど。
主演のヘンリーを誰が演じたのかはエンドクレジットには書かれていません。つまりは、あなたなのです。私なのです。
是非、この映画を“体感”してみてください
MikiMickle

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