掛谷拓也

オール・シングス・マスト・パスの掛谷拓也のレビュー・感想・評価

3.5
1990年9月にアジア最大規模といわれた大阪心斎橋店がオープンした週から数年間輸入盤CDといえば4階建てのタワーレコードで買っていた。輸入盤の圧倒的な在庫と安さに他で買うメリットがなかった。しかしこの映画にもあるが、量販店との価格競争、そしてAmazonとNapsterが全てを変えてしまう。確かに自分もそうで90年代後半にはタワーレコードには行かなくなり、2006年には西心斎橋、アメリカ村からタワーレコードはなくなってしまう。このドキュメンタリーは、1960年サクラメント店、1969年サンフランシスコ店、1970年ウェストハリウッド店のオープンから、日本進出、本国での全店閉店までを描いている。ユダヤ系アメリカ人の創業者ラス・ソロモンが最初から最後まで聞きやすい西海岸英語でインタビューに答えている。サクラメント時代はフォーク、サンフランシスコ時代にフラワームーブメント、ウェストハリウッド時代にはビーチボーイズからビートルズ、MTV時代にはマイケル・ジャクソン、マドンナ、シンディ・ローパーとアメリカ音楽の中心だったタワーレコード。心斎橋店が2006年8月末閉店、本国全土で12月末閉店。ラス・ソロモンの家族的経営に感謝している、販売員から幹部になり解雇された社員のインタビューや当時の西海岸の様子が良い。タイトルももちろんいい。この手のドキュメンタリーは見る人は多くないが、洋楽が好きな人にはおすすめしたい。