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アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ3の消費者のレビュー・感想・評価

3.8
・ジャンル
サスペンス/リベンジ/バイオレンス/スラッシャー

・あらすじ
かつて田舎町で苛烈なレイプを受け報復を遂げたジェニファー
犯人達を殺して数年の時が経っても彼女は今なお当時の記憶に苦しめられていた
鮮明な悪夢と自身の凶行による幻覚は名前や職、住む場所を変えても彼女を解放せず、人間不信から周囲や男性とも距離を置き過ごす日々…
そんな姿を見かねたセラピストの勧めでグループセラピーに参加するジェニファー
それもまた救いにはならなかったが彼女はそこで運命の出会いをする
参加者の1人である勝ち気な女性、マーラである
苦しむばかりの他の人々とマーラは明らかに違い、復讐心や男性嫌悪を強く露わにしていた
そしてジェニファーは彼女に強引なナンパから助けられた事で親密になっていく
しかし間も無く事件は起こる
突如としてマーラが何者かに殺害されてしまったのだ
有力な加害者はDVを働いていた彼女の元カレであったが証拠不十分で釈放
この出来事がジェニファーの復讐心に再び火を付け、マーラの元カレに始まり次々と報復殺人を重ねさせていき…

・感想
「発情アニマル」の邦題で公開された‘77年に起きたという実際の事件を元とした同名作品のリメイク版シリーズ3部作の最終章
今作では原作及び1作目の主人公ジェニファーがアンジェラ・ジトレンカと名を改めて続投しており、事件のその後を描いている

前作のレビューでも書いた通り1作目は原作の良さを保ちつつ作風をより生々しく陰惨かつリアルにアップデートした名作
無関係の新たな事件を描いた前作はご都合主義な展開と安いドラマ性、被害者の絶望の描写不足など残念な点の多い内容だった
そして1作目の後日談を描いた今作
こちらも少々粗は目立ったけど主人公ジェニファーが復帰して事件が心に残した傷を軸としていたので前作よりは遥かに良かったと思う

本来、犯罪の被害者を守る立場であるはずの保安官まで共謀してのレイプ被害を受けたジェニファーの過去
これが存分に活かされていて被害だけでなく復讐のトラウマにも今作で彼女は苦しめられていた
法が守ってくれなければ自分で身を守らなければならないと確信している一方で自身の犯した殺人のもたらす幻覚にも苛まれる様は1作目の様なリアルさがあってなかなか良い
そして彼女と同様に復讐を是とするマーラとの出会いと喪失
これによって彼女の社会への怒りはエスカレートし、復讐という形ではあるが自身もまた暴力のもたらす快楽に取り憑かれていく
この展開は復讐は何も産まない、という事をロジカルに示すよりも遥かに説得力があったしオチも含めて良い意味で胸糞が悪く好きな内容だった
いわゆる有毒な男性ではない人物がしっかりといたのも隙がない
加えて復讐殺人におけるゴア描写も前作までの様に激しく、凶行の手法がもたらす結果もまた救いがなくて秀逸
ジトレンカという新たな名前の持つ意味や終盤の獄中シーンなどウィットに富んだ部分も悪くない

ただ前述の通り今作には粗がある
それは早い段階で警察に疑いを持たれているとはいえ決定的な証拠には全く辿り着いていない点
1作目は腐敗した保安官が牛耳る田舎町が舞台、2作目は助けを求めた時に応じなかった刑事が凶行を見逃す、など一定のリアルさが保たれていた部分がこれによって薄れてしまっていてそこがとにかく残念
単なる復讐だけではなく捻りがあったりというのが良かっただけにそれだけが惜しかった

とはいえまぁただ復讐を描くだけではなく一定の意義がある内容だったのでシリーズ完走の意味はあったかな、と
あと残されているのは原作の続編のみ
こちらが今作と比べてどういう内容になっているのか
少々不安もあるけど原作が好きなので楽しみにしたい
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