Yoshishun

ロンドン・ロード ある殺人に関する証言のYoshishunのレビュー・感想・評価

-
"宮部みゆきミステリーを装った激ヤバミュージカル"

約1年ぶりに出会いました。
100満点で5点のような激ヤバ映画に。

冒頭、宮部みゆき原作×大林宣彦監督『理由』を思い出した。ある殺人事件が起きたアパートで、住民にインタビューしながら事件の全貌が明らかにされていく、という作品。
本作はロンドンロードと呼ばれる平和な街で起きた、売春婦5人殺害事件をベースに、住民に事件についてインタビューしていく。

しかし、ここで宮部みゆきミステリーだと勘違いしていた観客に、本作が一体どんな映画かを突きつけられる。

突然、証言者がごくごく普通のことを歌い出すのです。さらには、殺人事件を伝える報道番組のニュースキャスターもミュージカル調に報道し始める。ミュージカル映画は、出来事を表面的になぞらえたもの、また心情を歌ったものの2つに分けられると思うのですが、本作は圧倒的前者。
というより、全くミュージカルにする必要のない台詞を歌い上げていきます。

これには単にミュージカル批判ではなく、突如起きた殺人事件に動揺する住民をミュージカル的に描いた、そういう意図であればわからなくもないです。しかし、そうした住民の不安自体が「怖いわー」ぐらいの表面的なものしか語られない。同名ミュージカルに忠実なのかもしれませんが、ここまでくると最早わざわざ映画にする意味が見出だせません。

ミュージカルに忠実にしすぎて失敗した代表的な例としては、やはり2020年の『キャッツ』が挙げられるでしょう。ジェリクルキャッツという選ばれし1匹を目指して競い合うという内容でしたが、本当にそれ以上でもそれ以下でもない。完全に映画向きの題材ではないんですね。加えて猫人間に全世界震撼というハンディキャップ付き。
本作もまさにその代表例に加わると思うし、個人的には『キャッツ』以上に映画向きではないと感じました。

根本的にストーリーが壊滅的。
簡単に言うと、
①ロンドンロードで殺人事件発生
②住民が不安がる
③犯人逮捕も、街の印象最悪に
④イメージアップのためガーデニングコンテスト開催
⑤元の街に戻ってハッピー

……こんな感じです。
特に③~⑤は酷すぎて逆に笑えてきます。
犯人逮捕の緊張感はまるでないし、裁判所に連行される犯人に怒号や罵声を浴びせるシーンも無駄に長い。おまけにそれさえもミュージカルで、一つ一つの台詞に重みもないし、ギャーギャー騒ぎ立てる構図に失笑。
そして、肝心のガーデニングシーンもミュージカルが邪魔をしてる印象。
いつの間にかコンテスト当日になり、パッと出の町会議員が指揮するという謎展開。
更には売春婦へ救いの手を差し伸べる気すらなく、後味の悪い結末なので、住民が安堵している姿に違和感しか覚えません。

まだまだ続きます。
ミュージカル映画なのに、ミュージカルシーンが滅茶苦茶つまらないんですよね。
先日『ウエスト・サイド・ストーリー』を観たので余計に。
どれくらい詰まらないかというと、一般的なディズニーミュージカルに例えると、歌う主人公の周囲にいるモブです。
歌唱パートにおいて何か劇的に動くとかもなく、ただ歩きながらであったり仁王立ちで主人公に合いの手を入れる感じ。
本作でミュージカル、歌唱する連中はほぼ棒立ちでカメラに向かって歌ってるだけです。カメラワークが酷いのもありますが、監督の演出が原因でしょうか。

また、大々的にトム・ハーディ出演が宣伝されてますが、タクシー運転手として一瞬登場するだけです。「俺犯罪心理学者で、事件に興味あるけど犯罪者じゃないよ」と歌うだけです。クライマックスでもう一回出てきますが、ついには台詞すらもないです。どうみてもトム・ハーディの無駄遣いでしょ、あんなの。



…………色々言ってきたけど、まだまだ言い足りない。でも一向にレビュー終わらなそうなのでこの辺で。
久々にここまでの作品観たわ。
というかゴッドファーザーの後に観るもんじゃなかったわ笑

トム・ハーディに惹かれた人は皆観ようね!!
アマプラで配信されてるよ!!


追記:あんな非常テープの張り方ある??
ゴミすら回収しない無能警察なんだから、そりゃ殺人事件起こるわ。
Yoshishun

Yoshishun