安堵霊タラコフスキー

カイロ中央駅の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

カイロ中央駅(1958年製作の映画)
4.5
エジプトを代表する映画監督ユーセフ・シャヒーンの出世作となった犯罪映画だが、ネオレアリスモ的な趣が感じられたのも実に面白い作品だった

50年代当時のカイロは中々栄えてたけど格差も激しかったんだろうなという具合にエジプトの都会の様子が見ただけでよくわかる作りは資料的な意味でも興味深かったし、貧しいながらも逞しく生きる人々の躍動というのも十二分に感じられた

しかしそれ以上に文字通り愛に狂って犯罪行為に手を染める男を監督自身が演じているのだけど、それが熱演極まりなくチャップリンの放浪者の如き憐れみすら感じられる様は見事と言わざるを得ず、役者ユーセフ・シャヒーンの底力を見た

ところでこの映画、駅が舞台になってるため列車に関する危険なシーンが多々あるのだけど、特に序盤にあった子供が列車に轢かれそうになるシーンとかは一歩間違えたら命に関わる大惨事になり兼ねず、蜘蛛の巣城における黒澤明やフィッツカラルドのヘルツォークに通じる監督の狂気性というものが地味ながら覚えて、見ているこっちが空寒くなった