アズマロルヴァケル

真白の恋のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

真白の恋(2015年製作の映画)
3.8
なんだかやるせなくなった恋愛映画

・感想

結論からすると、脚本も演出も日本映画らしくて凄く好感が持てて、概ねリアリティ路線のある泣ける映画に仕上がっていて、良作ではありました。

要は、真白のまわりがいい人ばかりで皆が主人公の味方になっていくという展開にはならず、真白の味方がかなり少数になっているところが現実的でいて深みが出ていました。中盤に真白が20年前に誘拐事件の被害者だったという設定はなんだかご都合主義のようで無理があるような気がなくもないものの、誘拐事件が昔あったからと言ってカメラマンの油井を邪険に扱う真白の父や兄の描写というのは分からなくもないし、特に長谷川初範演じる真白の父が怒鳴るシーンなんかは心にグッと来ました。

ただ、その一方で真白の兄である蓮か妻の美咲の描写が薄くしているせいか、後半に蓮が油井を殴って罵倒しては真白を強引に家に帰そうとするので、胸糞悪く感じてしまい、真白のカメラを見て改心するシーンでもそこまで蓮の描写がないまま出番が終わるので、エンドロールになっても胸糞悪さが消えないままモヤモヤ感が残ってしまった。

主軸としては、真白が都会に住む油井を通しての淡い恋を描いているところもあれば、『障害』に関しては重く描いてはいないので良かったものの、ラストで何事もなかったかのように皆が日常を過ごしているなかで、真白の描写を説明過多になってもいいので店番のシーンやいとこの雪菜のところに行くシーンを追加した方が良かったと思った。

それでも、ある意味田舎町で起きたある少女の『ファーストコンタクト』ものだと思うし、この映画を観て『普通って何?』と考えさせられる余韻が深い映画だった。個人的には少なくとも『障害者』をメインとした感動ポルノではなく、ごく『普通』のラブストーリーとして仕上がっているのが地味に凄いと思う。