さわだにわか

餌食のさわだにわかのレビュー・感想・評価

餌食(1979年製作の映画)
3.7
アメリカ帰りのタフガイを気取っている内田裕也はそのじつ劇中の誰よりも繊細で脆く、彼は事故の痕跡を素通りできる薄情かもしれないが強く生きることのできる現代的な人々の恐ろしさに絶叫して逃げ出してしまうのだった。ラストの非現実的な乱射風景が現実のようには思われない。彼はただ逃げたんじゃないだろうか。たぶん物語が始まる前にも同じようにしてアメリカに逃げて、そこで成し遂げたことといえば皿洗いのバイトだけで、そんな状況に耐えかねて再び日本に逃げ帰ってきたんである。ひとつ逃げるごとにひとつふたつ逃げ道を失っていくそう若くはないロックくずれの哀れと醜さ。内田裕也が不意に見せる少年のような表情が沁みる。
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