一人旅

ダンガル きっと、つよくなるの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ニテーシュ・ティワーリ監督作。

レスリングを通じて絆を深めてゆく父娘の奮闘を描いたドラマ。

インド映画の世界興行収入歴代第1位を塗り替えた話題作で、ボリウッドの大スター:アーミル・カーンが娘に夢を託す熱血おやじを力演しています。製作会社の一つに、1999年にカーン自身が設立した「アーミル・カーン・プロダクション」が名を連ねており、本作はアーミル・カーン肝煎りの超メジャー作になっています。

元アマチュア・レスリング国内王者の父親:マハヴィルが、腕っぷしの強い長女:ギータと次女:バビータをレスリングの国際大会で優勝させるため、半ば強引に二人を我流の指導法で猛特訓するが…という“スポ根×親子愛”のエンタメ感動作で、インドの実在のレスリング一家:フォーガット親子をモデルにした実話をベースにした物語が描かれていきます。

インド映画なのに、お話の筋とは無関係に挿入される唐突な歌&ダンスシークエンス”を排除した―“ドラマ部分でしっかり魅了してくれる”パターンの作品で、自分が果たせなかった夢を娘に勝手に託す父親と、強制特訓に始めは反発しながらもやがては父親の深い愛情を確認してゆく姉妹の衝突と融和が感動的に描き出されています。

女の子にとっては超ハードなスパルタ猛特訓を経てインド・レスリング界で頭角を現してゆく姉妹の精神的&肉体的成長と、父親への想いの相違が原因で散逸してゆく父娘関係とその後の絆の回復を、観客からの“クサイ”という野暮な感想にも臆することなくストレートに描写していて、変に気取らないその素直な作劇にとても好感が持てます。

そして本作最大の見所は、レスリングの試合風景が生中継を観ているかのような圧巻の臨場感に包まれている点にあります。クライマックスの国際大会では、レスリングのルールを良く知らない人でも抜群に愉しめる白熱の試合が延々と繰り広げられる贅沢な仕様になっていて、“一瞬の隙を突いて一気に攻める”―レスリングの醍醐味が素晴らしいカメラワークと共に現出されています。スポーツ映画史に残る名試合と云っても過言ではないでしょう。

スポ根映画としての手に汗握る見せ場と家族ドラマとしての感動的着地、双方の魅力を遺漏なく最大限に引き出した傑作マサラムービー。恐るべしインド映画であります。
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