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死画像の消費者のレビュー・感想・評価

死画像(2015年製作の映画)
4.6
・あらすじ
一般投稿者達から寄せられた6つの心霊映像と付随する音声
それらを投稿者や共に心霊現象に遭遇した周辺人物などへのインタビューと共に紐解いていく、という設定の作品

1. 「錯死霊」
投稿者: 森田明土
中学時代の同級生、羽生から久々に連絡を受け、夏休み中に地元へと帰省した大学生の投稿者、森田
2人は酒を酌み交わし、酔ったノリで過疎化の影響で廃校となった母校へと行く事に…
到着した2人がビデオ撮影をしながらどうにか侵入出来ないかと外で探っているとどこかから聞こえた女性の声と共に一つの窓が開く
すっかり老朽化し汚くなった校舎の中には無数の止まった時計があった
不気味な空気を感じながら歩いていく2人
すると同行者の羽生がある過去との変化に気付く
飾られていたはずの自画像が無くなっていたのだ
それをきっかけに森田はある噂を思い出す
美術室にまつわる都市伝説である
内容は美術部員の女子が焼身自殺か火災によって亡くなる直前、死を予感させる様な不気味な自画像を描いていた
それを見ると作者の女子が姿を現す、という物だ
しかし今まで絵を見た人はいないらしい
半信半疑ながら2人はその絵を探しに美術室へと向かう
あちこちを探し回る2人
そして羽生がそれらしき絵を発見
その直後、羽生は何かに怯えて一目散に逃げだしてしまう
果たして彼が目にした物とは…

2. 「死の報告者」
投稿者: 室井健
自主映画サークルに所属する投稿者の室井
彼はメンバーの菅原によるホラー映画の製作に参加し、主演俳優を呼び顔合わせを兼ねた読み合わせをしていた
メイキングとして撮影されたのがこの映像である
会合は室井の通う大学にある一室で行われた
そして助監督の富岡翔が主演の小林からの電話を受け、迎えにいくとその4〜5分後
見知らぬ男が部屋へと入って来る
男はぶつぶつと「〜が起こった」、「富岡が死んだ」などと呟いており、誰が話しかけても無視を決め込む
彼は小林の知り合いでイタズラをしているのでは?と一同は考えたがどうやらそういう訳でもないらしい
全員が男は何者か頭を悩ませていると彼は突然退室
しかし外を見ても男の姿は無く、足音も耳にしていない…
その直後、小林から掛かってくる電話
小林によれば富岡は交通事故に遭い重傷を負ったらしい
更に出演者の女性、菊池リサもまた急に倒れ込み過呼吸に…
富岡もまた即死だったという…
その後、一部始終の収められた映像を確認する室井達はおかしな点を見つける
更に製作陣が入手した事故の記録された防犯カメラの映像にも不可解な物が映っており…
果たしてそれらに映っていた物とは何だったのか…

3. 「霊感テスト」
投稿者: 村瀬尊
投稿者の村瀬は友人達と千葉の廃墟へと肝試しに行った
その場では何も起こらなかったが彼らは隅の部屋で1つのビデオテープを発見
再生機器を持つ参加者の1人の家で一行は内容を確認する
映像は霊感テストというタイトルが映し出された後に診断室の様な場所へと切り替わり、そこにはカメラに背を向けて座る着物姿の女性がいた
それ以外には何も無かった為、結局ビデオテープはその再生機器を持つメンバーの家に置いていく事に
その約1週間後、ビデオテープを保管していたその友人に村瀬が会うと彼は奇妙な事を語り出した
1度目の鑑賞後に再び彼が見直すと女性の顔の角度が変わっていたというのだ
村瀬も同様に見直すと確かに彼の言う通りだった
村瀬はその変化を確認すべく映像をPCへとコピーし、2週間後にもう1度コピーを行う
するとやはりまたその変化は起きていた
その後、その友人は駅の階段から落下し大怪我を負ってしまう
友人曰く周囲には誰もいなかったにも関わらず「来て」という女の声と背中を押される感触があったらしい
村瀬が投稿したのは自分にも何かが起こってしまうのでは?という不安からだという
村瀬の話を受けて製作陣はもう1度コピーするのだが…

4. 「歌声」
投稿者: 柴山昌人
友人: 長谷川悠
とあるアパートの1階に住む柴山はある事が気になっていた
毎晩、深夜1時になると部屋の窓から見える道を通り過ぎる男の歌声が聞こえるのだ
近所迷惑でもある男のその行動
柴山は友人の長谷川を呼び、歌声を確認させると2人で男にイタズラする事を思いつく
部屋の電気を消して大声をあげて驚かせようという物だ
そして時間は深夜1時に
2人は「おいヘタクソ!」と大声で男を罵る
2人は数分、様子を見ていたが男は現れず、痺れを切らして外に出て探すのだがやはり男の姿はない
二手に分かれてそれぞれ撮影しながら男を探す2人
その先に待ち受けていたのは恐ろしい物だった…

5. 「貫通」
投稿者: 南原友哉
恋人: 源あかり
半年ほど前にビデオカメラを購入した友哉はその楽しさから何でも撮っていた
その頃、友哉はあかりの部屋へと転がり込み同棲を開始
ある日、友哉が何気なくあかりを撮影していると奇妙な物が映り込む
彼女の背後にあった全身鏡に彼女の背中に張り付く何かが見えたのだ
その直後、突然発生した停電
怯えた友哉は風呂場に逃げ込んでしまう
咄嗟に友哉赤外線モードに切り替えるとそこには更におぞましい物が…
電気が復活し、風呂場から戻るとあかりは悲鳴と共に気絶していた
しかしあかりにはその間の記憶は無く、それ以降は何も起こっていないというが…

6. 「クニコ」
投稿者: 若宮菜摘
中学の同窓会に参加する為、岐阜に帰省した菜摘
仲の良いグループで彼女が談笑していると隣のグループの会話からある言葉を耳にする
「3組のクニコ、亡くなったらしいよ」という物だ
菜摘自身はクニコと呼ばれる女性とは面識は無かったが不思議と気に掛かり、実家の倉庫で調べる事に
しかし卒業アルバムにもクニコという名の生徒は載っていなかった
耳にした話自体が聞き間違いか?と思う菜摘だったがダンボールの中から古びたビデオテープを発見
ラベルには「くにコ」と書かれていた
菜摘が両親に訊ねると母は名前に心当たりがあるという
菜摘は小3の頃、2つ下の弟である淳史を亡くしている
彼の死は原因不明だったが、死の直前に何度も「クニコちゃん」とうわ言を口にしていた
その話を聞いて菜摘の記憶が蘇る
菜摘は当時、近所のお姉さんとよく遊んでいた
彼女は中学生くらいの少女だった
ある日、お姉さんの家から帰る時に菜摘は彼女の父からアニメのビデオだと言われ1つのビデオテープを受け取っていた
今となってはそのビデオを観たのかもどうしたのかも分からないが渡されたのは弟の死の直前
その後はお姉さんと遊んだ記憶はないという
菜摘はお姉さんについても両親に訪ねたが2人は彼女とその父の事を知らず、菜摘自身もまた2人の顔も名前も思い出せずにいた
そういう事があった為にビデオを観たのが弟の死因だったのでは?と菜摘は考えている
更にインタビューの前夜、菜摘の元には不審な留守電が残されていたらしい
電話番号は彼女が行った事すらない東北のコンビニの物だという
その留守電の内容から菜摘は投稿やインタビューに怒りを覚えたクニコに呼び出されているのでは?と語る
このインタビューは投稿者が精神科に入院する前に撮られた物であり真偽は定かでない…
留守電に残されていたのは「クニコだよ、忘れないでよ」という言葉
そしてビデオテープには80〜90年代のニュース映像と思われる物が収められていた
製作陣も編集中に一度だけ確認したが、後日スタッフが交通事故に遭ったという…
果たしてその映像の内容とは…

・感想
レビューの評判が良いしこの手の心霊ビデオ作品を観るのが初めてなので期待して鑑賞
結論から言うとTwitterで話題になったという6本目にして最後の映像、「クニコ」を除いてあまり怖くはなかった

1本目の「錯死霊」は絵画に憑いていた為か紙の様に薄い少女のビジュアルが斬新だったけどその後に霊障が続く訳でもないのしインパクトだけという感じ

2本目の「死の報告者」は話の核である見知らぬ男の姿が普通の人過ぎて、最後に流れる監視カメラの映像も不気味と言えば不気味ではあるけどこれもまた怖くはない

3本目の「霊感テスト」は映像自体の空気感は「リング」の“呪いのビデオ”にも通づる様な不気味さがあって悪くなかった
ただ女性の顔が完全にこちらを向くまでコピーを続けていない上に普通の容姿である以上は目付きなどで恐怖を演出して欲しい所なんだけどそれもなく…
現象がちゃんと恐ろしいだけに残念

4本目の「歌声」は目の付け所は良かったと思う
外へ探しに行き、2人がそれぞれカメラとスマホで撮影した映像を並べて流すという手法も現代らしく悪くない
ただ肝心の男のビジュアルが…
黒いモヤがかった様な影というのは大分ありがちだし、部屋へと逃げ帰った後に映り込んでいた真っ黒な男も「呪怨」シリーズの「黒い少女」と似通いつつもあそこまでの怖さはなくて惜しい

5本目の「貫通」は映像自体はそこそこ不気味で事の起きた時に起きた事を話さなかった上に1人で風呂場へと逃げ、挙句に黙って投稿した事によって怒る恋人と投稿者の口論という演出は面白かった
特に良かったのは暗闇の中で彼女に被って映った女性の霊の顔!
でも合成感がちょっと強過ぎたのがなぁ…
あと生気を失った彼女のおっぱい強調し過ぎじゃない?w

6本目の「クニコ」はやっぱり前評判通りめちゃくちゃ良かった!
投稿者が後に精神科へ入院した、という前置きも相まってインタビュー内容の朧げな怖さが留守電とビデオ映像のフリとして上手く機能していたと思う
投稿者の顔が映し出されていなかったのも素晴らしい
そして肝心の映像!
詳細不明のニュース番組で行なわれた少女の自殺報道に激しくノイズが混じっていく
ここまでは王道なんだけど映し出された少女、及川くに子の写真がノイズが激しくなるのと共に笑顔から睨みつける様な表情へと変わっていく編集が凄くリアル!
数回それが映ってからはノイズだけがしばらく映し出されていてそれが長すぎたのは気になってしまったしラストに映る少女の大きく目を見開いて叫ぶ様な表情はもう少し怖くして欲しかったけど十分に満足出来る物だった
アナログホラー好きにオススメ

全体的に投稿者達が顔出しな上に役者感が強過ぎたのが「う〜ん…」という感じだったので「クニコ」の様に全て顔を隠してインタビュー映像を撮ってくれていれば良かったんじゃないかなぁ…と
「貫通」に関しては顔出しだからこそ成立する物だったからともかくとして
とはいえ「クニコ」の様な当たりがあった事もありこういう心霊ビデオ物を今後も観てみようかなぁと思う程度の興味は惹かれた

ちなみにスコアはほぼ「クニコ」だけに対する物です
消費者

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