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ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘いのryodanのレビュー・感想・評価

3.0
90日間に及ぶ抵抗運動を色んな映像でつなぎ合わせた作品。とは言え、筋書きがあるので制作陣の意図を汲めば、勇敢なウクライナ人の誇りみたいなものが見えてくる。市民がこんなにも参加する抵抗運動は、一種圧巻で陶酔感もある。それは抵抗運動にはある種必要不可欠な要素であるし、それがモチベーションになる訳だから。多数のウクライナ市民が国家権力にこんなにも抵抗したのは、本当にスゴイ事だと思う。ただこれだけが今のウクライナ紛争の発端の一端であるはずがない。マクロな視点で言えば、ウクライナが「EU」に加盟するのではなく、「NATO」に加盟する事がロシアにとってどれだけ脅威か想像に難くない。NATOにとってもそれがどれだけロシアの逆鱗に触れるかは百も承知。西側にとってウクライナは厄介な問題で、絶対にNATO加盟はあり得ないが前提としての筋書きがある訳だ。それが透けて見えた時、西側の軽薄さがほとほとウンザリする。ゼレンスキーがあれほど助けを求めても、細々と武器供与をしてるだけ。その間にもウクライナ市民は殺され続けている。ゼレンスキーとて徹底抗戦の姿勢を崩していないが、果たしてウクライナ市民のどれくらいの人々がその姿勢でいるのだろうか?その姿勢が本当にウクライナ市民の利益になっていると思っているのだろうか?爆撃を逃れ、かろうじて生き延びているウクライナ市民の一人一人が自問自答しなければいけない。「私達はどこで間違えたのか?」。戦争が起こってしまったからでは遅い。その前にそうならないように権力を監視しなければ。権力は戦争をしたがる。日本の戦前もそう長くはなさそうだ。
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