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聖の青春の328のレビュー・感想・評価

聖の青春(2016年製作の映画)
3.6
20年くらい前に「月下の棋士」という漫画が青年誌で連載されていました。その単行本の巻末には登場人物のモデルとなった実存する棋士の紹介文が書かれていて、将棋に関する知識がほぼ皆無な自分でも引き込まれるように読んでいた記憶があります。
棋士たちのエピソードはそれ自体が漫画のようでした。分かりやすく簡潔に綴られている文章自体が達文なうえに、その棋士そのものに魅了されたものです。

その中でも殊更に印象的だった人物がこの映画の主人公です。モデルとされ描かれた「月下の棋士」のキャラクターはインパクトが抜群でした。
(将棋に全く詳しくない自分が思うに)羽生善治という稀代の天才による時代。その歴史の物語性を確実に魅力的としたひとりが村上聖棋士です。ご本人の意思とは裏腹に、歴史を紡ぐため、語られることを避けられない存在です。

映画は松山ケンイチが、当然とも言える圧倒的な説得力で演じています。更に羽生善治役の東出昌大の細かい所作や佇まいから醸し出される雰囲気が凄く良い(「Winny」「寝ても覚めても」など、最近見た東出昌大は常に素晴らしい)。他にも安田顕、筒井道隆ら俳優陣は軒並み見事ですね。

語るべき物語を語るべくして語った映画、という印象です。

テーマ 3.8
画 3.5
ストーリー 3.6
キャラクター 3.9
音楽 2.9
豊かさ 3.6
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