このレビューはネタバレを含みます
タンゴは全然見たことがなかったんですが、予告編に惹かれて鑑賞。
マリアとフアンへのインタビューとそれをもとに造られた再現映像で構成されているのが面白い作り方だなぁ、と思ったし、聞き手として本人たちを演じるダンサーたちが登場し、「自分なら..」という視点を交えながらマリアとフアンが描かれていくのが興味深かった(もちろん、ふたりへの尊敬も前提として)
芸術や仕事のパートナーと、人生のパートナーに求めるものの違いと、それが「たまたま」一致しなかったふたりについて深く考えさせられる。
冒頭でフアンがマリアのことを「ぼくのストラトヴァリウスに出逢ったんだ」と言っていて、このひとはマリアのことをあくまで仕事のために必要だ、手離せないと思っているんだなぁと感じて哀しくなった。
マリアはフアン以外に考えられないほど彼に夢中だったのだとよくわかるから。
皮肉なことにその情熱と想いが、ますますマリアのタンゴを唯一無二の素晴らしいものにしていく。マリア自身もそのことがわかっていて、「切ない」なんていう言葉では片付けられないような渦巻く感情を表現する手段こそ踊りだし、マリアにとってはタンゴなのだと思わされる。
ぴんとした背中と強そうな瞳を持ちながら、素晴らしくチャーミングなマリアに魅了された85分でした