てる

ドラえもん のび太の太陽王伝説のてるのレビュー・感想・評価

4.0

面白かった。
ドラえもんの作品の中でもこれはかなり好きな作品だ。

なんといっても緒方恵美がいい。横柄な王子がのび太くんやしずかちゃんの影響で、人に優しくすることを学んでいく。だけど、その横柄さというのは、王子という責務の重さからくる責任感の強さがいきすぎてしまったためなのだ。実際の彼は不安を胸に抱えた少年なのだ。母のベッドの脇にいるときだけはその心情を吐露していた。その微妙な少年心が伝わってくるのは緒方恵美の芝居が上手いからだろう。
のび太くんと同じ顔なのに、イケメンに見えてくるから不思議だ。演じる人が違うとこうも変わるもんなんだね。

今回はのび太くんの人柄の良さが全面に出ていた。彼はとっても不器用で、すぐに調子に乗るし、困ったことがあればすぐにドラえもんに泣きつく。だけど、誰よりも友達想いなのだ。自分がどれだけ運動音痴だとわかっていても、王子が困っていたときに、誰よりも早く駆けつけた。足手まといになるんじゃないかと不安になるが、友達のために全力を出しきったのび太くんは、不器用ながらも紛れもなく王子の力になれた。普段であれば、すぐに投げ出して、ドラえもんに泣きつくところを、彼はひみつ道具を頼ることなく、自らの力で王子を助けたのである。彼のそんなところに誰もが惹かれるし、誰とでもすぐに友達になれるのだ。
それは、あの横柄な王子とも打ち解けあえたのというのも彼の才能なのだろう。

王子とのび太は顔は似ているけど、性格は真逆だ。努力家で負けず嫌いの王子と怠け者で泣き虫ののび太くん。でも、二人はお互いに欠けていた部分をお互いが持っていた。
ジャイアンに認められたけど、しずかちゃんに嫌われた王子。子どもたちや侍女に好かれたけど、槍の指南役にこてんぱんにされたのび太くん。
彼らは一長一短だけど、大切なものを持っていた。それを認め合えることができて友達になれたのだ。

彼らはとても未熟だけど、成長を感じさせられた。子どもが観るべきものがつまっている作品だと思う。

それにしても、堀江由衣が名前もない役で出演していたことに驚いた。当時から大活躍していたのに、そんなこともしていたんだなねぇ。ほとんどセリフもなかったし、エンディングロールで初めて気づいた。いやぁ、人に歴史ありですなぁ。
てる

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