荒野の狼

ゴッホ~最期の手紙~の荒野の狼のレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
5.0
ゴッホの死の真相に迫る過程でゴッホの生涯が晩年を中心に描かれる2017年の95分の作品。ゴッホは従来自殺したというのが通説であったが、2011年にゴッホの伝記「Van Gogh: The Life」を刊行したスティーヴン・ネイフSteven Naifehとグレゴリー・ホワイト・スミスが新説を提唱し、本作もこれによっている。
ゴッホの人間性が描かれているのも魅力だが、本作の一番の魅力は、ゴッホのタッチを模倣した油絵で作成されたアニメ映像で、教会や星空といった風景から人物まで、ゴッホの絵画の世界が動いているようで、ゴッホが見ていた世界をそのまま体験できること。ゴッホというと写実的では決してないのであるが、これがアニメ化されると不自然さがまったくないのが驚きで、むしろ実写より生き生きと、ランプまでが生命をもって見えるあたりゴッホの新たな素晴らしさを発見したような思いである。本作は映画のカテゴリーであるが、絵画作品に分類されてよい芸術作品と言える。これがたとえばピカソの絵では非現実的でアニメにならず、逆に写実的な画家であれば、あえてアニメ化する意味は薄かっただろう。
本作を見ると、ゴッホの作品が見たくなる人は多いだろうが、2019年10月から2020年3月まで上野の森美術館と兵庫県立美術館で開催の「ゴッホ展」にも本作に登場する糸杉や麦畑の風景や、「タンギー爺さん」や「ガシェ医師」の作品が出品されている。ちなみにゴッホ展出品の「ガシェ博士の肖像」はガシェ医師所有のエッチングのプレス機で印刷されたものとされるが、映画でもガシェ医師とゴッホがプレス機を使うシーンがある。
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