矢嶋

パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリストの矢嶋のレビュー・感想・評価

3.6
フラメンコは門外漢だし、彼の作品も3枚程しか聞いていないため熱心なファンでもないのだが、彼の演奏が素晴らしいことは明らかに分かる。

亡くなっている人物のドキュメンタリーは関係者のインタビューが中心になりがちだが、本作は本人の話が中心である所が魅力。亡くなる直前まで撮影され急逝した旨のテロップが流れるため、すごいタイミングで作られたのだと運命じみたものを感じる。本人が出演しているゆえに、冒頭やラスト等映画的に”作られた”画もわずかながら存在している。

内向的な性格だと自ら語っていたが、一方で音楽に関してはかなり自信家なように見えた(傲慢とかではなく)。彼がいかに伝統的なフラメンコの世界で生きて来たか存分に語られるだけに、ジャズ・フュージョン界隈の人脈と共演した際に相当叩かれたという話は納得できる。

異文化的な面白さとして、スペインの街並みにおける白い壁とそれと対照的な鮮やかな色で構成された家は印象的だった。
また、指笛の意味がスペインとアメリカで真逆というのも面白いエピソード。

フラメンコのアーティストはあまり分からないが、チック・コリアやジョン・マクラフリン、サンタナといった有名人が出演している。ラリー・コリエルも少し話題に出るが、ディ・メオラについてはサンタナがElegant Gypsyに触れただけだったのが残念。

この手の作品の常として通しの演奏シーンが少ないという不満はあるものの、ドキュメンタリーという時点で想定済み。むしろ、亡くなる直前の彼の話を存分に聞ける意義を評価したい作品。
矢嶋

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