masat

オールド・ジョイのmasatのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
2.9
驚くほど何も起こらない。
だけど、
抗う術がない強烈な“孤独”だけが、目の前に遺った。

デビュー作から12年、ケリー・ライカートの第二作。
この作品に比べたら『リバー・オブ・グラス』(94)は、まだまだ外連味があった。
そんな映画の“ご都合”など捨ててしまわなくては、“自分しか出来ない”映画は創れない、と12年かけて達観したことは、想像に難くない。
贅肉を削いで削いで、落とした時に、一体何が残るのか?何を映すのか?
そんなストイックな身を削る旅を、映画は時折感じさせる。

森の黒、草木の黒・・・黒を〆た映像美が、緑を強く浮き上がらせていた。哀感漂う音楽も沁みる。
生活があり現実がある男と、放浪を続けるその友が、温泉があると言う山へ行って、帰ってくるだけだ。なのに、なぜにこれほどに寂しいのか?
そして、彼は彼を受け入れたのか?
ラスト、夜のしじまを彷徨うかの様に歩き回る姿が、恐ろしささえ遺す。

この作品が、どれほどの評価を受けたのかは解らないが、少なくとも、かのトッド・ヘインズが製作を買って出た映画であり、後にケリー作品の“ミューズ”となる実力派スター女優が魅了された訳だから、この監督の物語はここから始まったのだ。
masat

masat