福福吉吉

太陽の蓋の福福吉吉のレビュー・感想・評価

太陽の蓋(2016年製作の映画)
3.5
2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故の発生について、新聞記者の鍋島(北村有起哉)は官邸から流れる情報を待つが、官邸からの情報は遅く、テレビ映像での情報に先を越される状況に苛立っていた。一方、官邸内部では、福島原発の状況が電力会社から一切伝わってこないため、総理を始めとする災害対策本部は無力であった。
鍋島は、かつて原発問題を報道するため、フリーになった記者から福島原発の情報を得ようとする。

ストーリーとしては、官邸での様子を中心に福島原発事故の状況を描いた作品になっていて、とても分かりやすい。その分、福島の現場で起こっていたことについての描写は薄い目ですが、個人的にはこういう視点で見て分かることもあったので良かったと思います。以前に観た「Fukusima50」が福島の現場よりの作品だったので、上手く差別化できている気がします。

しかし、主人公の鍋島は情報の無い状況に苛立ったり、秘書官の坂下(袴田吉彦)などの役人に情報提供を強要するだけの存在なので、観ていて非常にイライラしました。鍋島の「誰の責任なんですか」という質問を官僚にしたとき、お前は何様だと思いました。責任を追及する必要性があるのは分かるけど、マスコミが鬼の首を獲ったように喚きたてる姿はどうしても好きになれません。

もちろん、日本国民に福島原発の情報が一切伝わっていなかったことは問題だと思います。原子力発電という巨大なリスクを含むシステムを監督する行政府と運営する電力会社に情報のパイプラインが無いことは異常としか言えません。そもそも監督していなかったと言われても仕方がない状況です。

最近、電力不足がニュースで報道されていましたが、どれだけの人が福島原発の事故のことを覚えているのか、どれだけリスクの高いシステムなのか、原子力発電を認めるのか、現在進行形の問題であることを本作を観て感じました。観て良かったと思います。
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