horahuki

デッド・ガールのhorahukiのレビュー・感想・評価

デッド・ガール(2015年製作の映画)
3.0
悲しみを怒りに変えるな!

『Daniel Isn't Real』が好評なので、モーティマー監督の長編デビュー作のこちらを。リスカのダメージをそのまま目の前にいる相手に転嫁させることのできるスーパーパワー持ちメンヘラ女さんが暴れすぎて手に負えなくなるお話。

いじめられっ子な主人公リンカーンが、いじめっ子たちの酷い仕打ちにブチ切れて反撃。一連の流れのその部分だけを切り取られたせいで、いじめっ子ではなくリンカーンが更生施設送りに…。そんで更生施設でも案の定いじめの対象になってしまう。何もかも嫌になり、一人で地下室に逃げ込んで「みんな死ね!」と叫んでしまったもんだから、モイラとかいうメンヘラ女幽霊さんが復活しちゃって、主人公の願いを叶えようとしてしまう…っていう流れ。

モイラは幽霊なんだけど物理が効く。でも殴ったりしようもんならダメージが全部こちらに跳ね返ってくるというクソ厄介な仕様。しかも勝手にリスカしたり首切ったりしても全部ダメージがこっちに来るので逃れようがない極悪っぷり。更には異常な治癒力があるのでモイラ本人にはダメージが残らない。強すぎる!

モイラはリンカーンくんの声をそのまま代弁する寄り添うタイプの復讐者ではなく、ただのメンヘラなので勝手にリンカーンくんの気持ちを曲解して思うままに暴れまくるという厄介すぎるやつ。

物語上はリンカーンくんとモイラは当然別人格なんだけど、抑えたくても膨れ上がる「いじめっ子に復讐したい!」っていうリンカーンくんの負の感情が実体化したものがモイラなんやろね。だからこそ言うことを聞かずに一人歩きし始める。押さえ込もうとするリンカーンと暴れ回るモイラは彼の中の理性と暴力的感情との争いなわけで、そこに冒頭一行目に書いたテーマ性が一応忍ばせてはあるのだけど、直球すぎてそこまで響かず…。

『Daniel Isn't Real』はまだ見てないから知らないのだけど、タイトル的にもイマジナリーな雰囲気出てるから本作ともしかしたら似てるのかも。『ホリデイズ』内の短編『お正月』もある意味では自分の写し身のような存在と対峙する映画だったし、そういうのが好きな監督なのかもしれませんね。
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