8bit

午後8時の訪問者の8bitのレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
3.8
「あの時、ドアを開けていれば…。」
もうこの一言に尽きる。

誰もが一度は味わったことのある、悔やんでも悔やみきれない後悔の念、罪悪感。
時間はもう戻らない。それでも人生は続いてゆくのだ。
取り返しのつかない罪を背負ってしまったとき、私たちはどのように向き合ってゆくべきなのかを、少女の死の真相を巡るミステリー仕立てで描いていて、とても面白かった。

医師という命を救う立場にある人間が、間接的とはいえ人の死に関与してしまったことの苦悩。
亡くなった少女の身元を調べ、真実を知るために奔走し、少女のために墓を買う。
せめてもの償いをしようとするジェニーの姿は淡々としつつ、その切実さに胸を打たれる。
ブザーが鳴ればドアを開ける。携帯が鳴ればすぐに出る。往診先の人々から食べ物や飲み物をすすめられれば喜んでいただく。
もう二度と過ちは繰り返したくない。繰り返さない。あまり感情を表に出さない彼女だけど、そんなひとつひとつの行動に強い意思を感じられた。
ジュリアンの秘めた思いにもはっとさせられた。彼には彼なりの葛藤があったんだ。
誰よりも人の痛みがわかる彼は良い医者になるだろう。

一見、音楽もなく淡々とした作りの映画のように見えるけど、伏線とかそういうのとは別の意味ですべてのシーンに意味があり、
人々の心の機微がとても繊細に描かれていて目がはなせませんでした。

しかしこんなに劇中で携帯が鳴る映画は観たことがない。
いつも上映前に電源を切ってくださいと言われているだけに複雑な気分だわ笑。
8bit

8bit