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セールスマンの8bitのレビュー・感想・評価

セールスマン(2016年製作の映画)
3.8
「午後8時の訪問者」はドアを開けなかったことが主人公に大きな影を落とす物語でしたが、
こちらの映画はドアを開けてしまったことで夫婦の人生が変わってしまう物語。
映画に限らず、ドアというのは様々な物語の可能性に満ちているんですね。

まさに「( (̵̵́ ̐̑͟˚̩̭ ̐̑)̵̵̀⸝o̗ どこでもドアー!」ですよ。

アスガー・ファルハディはドュニ・ヴィルヌーヴと並んで、いま最も骨太な映画を作る監督のひとりだと思う。
イスラム文化圏に根付いた価値観や社会情勢を盛り込みつつ、犯人捜しのミステリーと被害者夫妻のすれ違いを描き、そこに彼らが演じる舞台「セールスマンの死」をシンクロさせて行くという、もうとにかく超絶的な完成度。
演出も脚本も演技も非の打ち所がないほど素晴らしい。
若干テンポが悪いかなーとは思うけど(中盤寝そうになった笑)、とても濃厚で観ごたえのある映画だったと思う。

ただし、好きな映画になったかというと…。
自分が天邪鬼なのがいけないんですが、あまりにも完璧すぎると引いちゃうっていう悪いクセがございまして笑
ひとつひとつの完成度の高さに感心させられるばかりで、いまいち映画の内容自体にそこまで入ってゆけなかったんですね。
他のレビューでも書いたんですが、100点の答案見せられて「すげー!」って思わされている感じがしちゃうっていうか…。
もう少し映画を観た自分自身の解釈なり思いが委ねられるような柔らかさのある映画の方が好きというのが正直なところです。
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