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パレス・ダウンのkuuのレビュー・感想・評価

パレス・ダウン(2015年製作の映画)
2.6
『パレス・ダウン』
原題 Taj Mahal.
映倫区分 PG12.
製作年 2015年。上映時間 91分。
2008年11月にインドの都市ムンバイで195人の犠牲者を出した同時多発テロ事件を題材に描いたフランス製サスペンスドラマ。
主人公ルイーズ役にステイシー・マーティン。
共演にルイ=ド・ドゥ・ランクザン、アルバ・ロルバケル。

父の転勤でインドにやって来た18歳のルイーズは、新居が決まるまでの間、ムンバイの高級ホテル『タージマハル・ホテル』に両親と一緒に滞在することに。
しかし両親の外出中にホテルがテロリストの襲撃を受けて占拠され、ルイーズはひとり客室に取り残されてしまう。
外の世界との唯一のつながりである携帯電話で父親と連絡を取りながら、生き延びるべく奮闘するルイーズだったが。。。

私的ですが、まず今作品のルイーズの両親に子を思う親の愛が感じられんかったし、どうも感情移入出来なかった。
今作品は実話に基づいているそうで。
2008年11月、イスラム過激派組織ラシュカール・エ・タイバのパキスタン人メンバー10人が、インドのムンバイで4日間にわたって12件の銃撃・爆破テロを組織的に実行した背景を描かれてるが、全く伝わってこない。
この攻撃は11月26日水曜日から11月29日土曜日まで続き、164人が死亡、少なくとも308人が負傷し、世界的に非難を浴びたし新聞の記事などで小生も知ってた。
攻撃のうち8件は南ムンバイで発生し、チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス、トライデント・オベロイ・ホテル、タージ・マハル・パレス&タワー・ホテル、レオポルド・カフェ、カーマ病院、ユダヤ人コミュニティセンター、メトロシネマ、聖ザビエル大学、「The Times of India」ビルの裏路地で起こったそうだが、映画を見る限りでは、テロの概要を知らなかった、絵空事にうつるような感じで撮られてる。
その辺ほ製作陣の意図するとこらしいけど、見てて腑に落ちなかった。
両親の転勤でインドに住むことになった少女が、高級ホテル タージマハルホテルの客室に取り残され、体験した実話ですとあるが。
人物、状況、会話は事実と異なるなら何とでも云えるかな。
今作品の最初の20分は、ルイーズとその家族が街を観光したり、巨大な豪華スイートでくつろぐシーンに費やされる。
しかし、両親が夕食に出かけ、娘を一人にしたときから、物語は始動する。
もちろんその時、ルイーズは外で奇妙な音を聞き、いつもは混雑している通りに誰もいないことを発見する。
かなり耳に触る効果音を多用し、携帯電話を使って何が起こっているのかを説明しながら、情報を明らかにする巧妙な方法を取っている。
しかし、実際の出来事を再現したアドレナリン全開のハっラハラドっキドキを期待させながら、結局のところ、個人的にはその水準に達していない。
電話による父親の指示に従い、ルイーズは部屋に閉じこもり、照明を落とし、バスルームに隠れる。 
ホテルの他の場所で銃声と叫び声が鳴り響く中、彼女は我々と同じように長い間待っている。 
サスペンスの頂点は、彼女が携帯電話の充電器を取ろうとしたとき、ドアのすぐ外に犯人がいることに気づくこと。
そして、彼女は再びバスルームに戻る。
こんだけ盛りだくさんでありながら、ほとんど何も起こらない。
怪しげなヒロイズムを避けつつ、十分な人物描写(ルイーズは写真家になりたがっているが、それしかわからない)も、ポール・グリーングラス作品のようなリアルなスリルもなかった。
本格的な長編映画としては不十分で、上映時間は短いけど、実際には薄くて伸びた印象しかないかな。
今作品は、見知らぬ悪人がホールを歩き回り、爆発が土台を揺るがすホテルの部屋に閉じ込められるのがどんなものか、幾分かは忠実に描いているとは思うが、ルイーズはピンチの時に味方にしたい女の子とはとても思えない。
外で火が燃え、父親がドアの下に湿ったタオルを置くように指示したとき、彼女は水が汚いと文句を言い始める。
ただ、階下の住人(アルバ・ロルヴァッハー)の転落事故を防いだときだけは、少し元気を見せたかな。
すべてのスリラーは、信頼性と危険性の境界線上にあるけど、サーダ監督は明らかに前者を選択し、物事をできるだけ信じさせようとしながら、決して安っぽいトリックを使って我々を驚かそうとしない。
カメラマンのレオ・ヒンシュティン(『ノー・エスケープ』)と協力して、説得力のあるリアルな出来事を作り上げたが、その過程で多くのものを犠牲にしてしまい、街全体のトラウマを家族のちょっとした出来事のように感じさせているに過ぎない作品になってた残念。
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