寝取りギトリにつづく、寝取られギトリ。タイトルの「カドリーユ」のごとく男女が入れ替わり立ち替わり、口説き、口説かれ、踊るような快活な不倫劇。全員思ってること全部口に出しちゃうので面白い。しかも最終的には誰も敗者がいない。時間の経過を示すように切り替わるユニークな女性衣装、心理作用と次の局面を暗示するドアの開閉。

「女には驚くよ。互いの恋人を奪い合いながら、一方で団結し全ての責任を男に負わせて苦しめる」当時は知らんが、今ではこの台詞は女と男が逆でも成り立つんよ。

おっそろしくよく出来た恋の鞘当て合戦。皆が多少の罪悪感とその残りの余地を全て開き直りに当てながら、何事にも一理あるの一理の方を後ろでは音を立てて崩れゆく石橋を爪先立ちで叩きながら進み、結局はもう始点には戻れぬ終局へと向かっていく。途中ギトリは恋人にハンケチを差し出し、それを彼女はぐっちゃぐちゃに丸めて絡めてしまうのだが、それをギトリは巧みな手さばきで解き、本来そこにあるべき胸ポケットへと納める、まさにそのような作品である。経験則と自虐、諦観、そしてなにより運命に左右される４人の恋の行方、最後はなんともロメール『友だちの恋人』の様に鮮やかに、走り出せあらかじめ決められた恋人達よ、どうなっても知らないがなw自由の国フランス万歳。にしてもギトリの当時の嫁さんがエロ綺麗すぎる、芸人がモテるってのと同じ理屈な気がしてならない。

ギトリの魅力にはまりました。
犬も食わないなんとかを落語か、漫談か、男女の絶妙な会話に聞き惚れてしまう。夫婦喧嘩を題材にした対話系の作品はいくつかあるけれど、元祖バトルもの、ただしコメディで、浮気したパートナーを問い詰める。本音を語り、かつ笑いで煙に巻く、行方不明なのは愛でした。見事なスゴワザです。フランスのアムール事情は複雑です。浮気をネタにこれだけの会話劇、ギトリのおもしろさ堪能しました。

カドリーユとは４人のダンスのこと。