これは紛れもなくメル・ギブソン流、魂の映画。
銃を持つことを拒否しながらも自ら志願して負傷者を助ける衛生兵として戦地に赴く主人公を演じるアンドリュー・ガーフィールドが正に適役。奇しくも「沈黙」と同じ日本を舞台にキリスト教の信念を貫く役柄を文字通り熱演します。
前半は、彼が信念を心に刻むまでの年少期から出兵するまでに関わる登場人物達との紆余曲折を、メル・ギブソン監督作品としては珍しい人間ドラマを構築させて、後半の戦場場面へ巧みに繋げます。
そして沖縄での凄まじい戦闘シーンの過激さは、メル・ギブソン監督の真骨頂で容赦ありません。対戦国が日本でありアメリカ目線での展開という事情による、我々日本人ならではの複雑な思いを確かに抱きますが、戦争そのものへの総体的な怒りがそれを超越します。色々ありましたが、やはりメル・ギブソンは監督としても一流であると改めて示す作品になりました。
映画の題名でもある難攻不落の崖ハクソー・リッジとは、実は沖縄の前田高地である事を日本の配給会社の宣伝では、概ね公けにしていません。むしろその事実の方が嫌な余韻を残している気がして仕方ありません。
