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メリー・ポピンズ リターンズのOhuのレビュー・感想・評価

4.6
見始めは興行的にパッとせず、あまり話題にならなかった事もあり、斜に構えて粗探しな目線で鑑賞していましたが、物語が進むに連れ商業路線ではないことに気付き、映画が終わる頃には胸いっぱいになっていました。『プーと大人になった僕』同様、大人向けのファンタジーで近年のお祭り映画とは異なった、遺産や伝統を重んじた作り込みは実質的に心に残るものとなりました。CGをあまり多用せず、舞台劇の様な演技も素晴らしかったです。主演のエミリー・ブラントと、リン=エマニュエル・ミランダも主張し過ぎず、ギリギリのラインを保っていましたし、パディントン組のベン・ウィショーとジュディー・ウォルターズのかけ合いや、ロシア訛りで演じたメリル・ストリープも見どころ。ミュージカルパートもテーマを壊さない程度に現代風のアレンジを加えて見せ場として華を添えていましたし、適度にクールダウンして本筋に戻る流れも秀逸でした。母親を失った子供達を温かく見守る大人たちの『イントゥ・ザ・ウッズ』に通ずる優しさに感動。傷付き疲れ果てた父親の前で子供達が歌うシーンは分かっていても涙腺が崩壊しました。ただ一つ残念な点は、ジュリー・アンドリュースが本作に出なかったこと。本人は観客の意識が一瞬でも自分に向いてしまうことを懸念し、断ったと発言していましたが、本作にはやはり必要不可欠だと思いました。現にディック・ヴァン・ダイク氏が出演していますから。ジュリーが演じる筈だったであろう終盤のシーンが彼女だったら満点だったのになぁ、と心底惜しまれる作品でもありました
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